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<そうなのねゼミ>2 #ジェンダー論 性別の決めつけ問い直す 道教大函館校国際地域学科・木村育恵教授

 驚きや感動が広がる学問の世界を分かりやすく紹介する「そうなのねゼミ」の第2回はジェンダー論。夢さぽ大学2年生の知晴さんが北海道教育大学函館校国際地域学科の木村育恵教授を訪ねた。(長谷川賢)

知晴 ジェンダーという言葉を最近よく耳にします。分かるようで実はあまりよく分かっていない気がします。そもそもどういう意味なのですか?

木村教授 生まれた後に社会の中でつくられる性差、性別による役割分担、ものの見方、考え方のことです。女なら気配りができるはずだとか、男は泣いてはいけないとか、そういう思い込みや決めつけ、それに基づく規範まで含んだ概念です。生まれつきのものではないので地域や時代によっても違いが生じます。

■「人は女に生まれない」
知晴 フランスの哲学者シモーヌ・ド・ボーボワール(1908~86年)が「第二の性」という本の中で「人は女に生まれない。女になるのだ」と書いていますが、まさにジェンダーのことを言っているのでしょうか?

木村教授 その通りです。私たちは言葉によって考えたり行動したりするので言葉はとても大事です。例えば妻のことを「家内(かない)」という場合、家の内側にいる人が妻の役割であると規定してしまう概念とつながっていて、その言葉を使うことで再生産されます。若い人たちの中でも女性の交際相手を「嫁(よめ)」と呼んだりする場合があると聞きます。結婚レベルの、とても親密な関係をアピールしているのだけれど、もともと「嫁(とつ)ぐ」は夫の側の家に入る意味で、こうしたマウント(優位性を誇示する行為)には無自覚です。

知晴 女性の側も「嫁」と呼ばれてうれしく思う人がいるかも…。では先生、どう呼べばいいのですか?

木村教授 恋人や配偶者が異性か同性かに関係なく使える言葉としては「連れ合い」とか「パートナー」という表現があります。妻や夫という言葉も異性婚を前提にしています。性別は多様です。お互い対等な関係であることがより重要です。

■無自覚に偏見を拡散
知晴 つい最近、ジェンダー平等が時代遅れのような発信をした報道番組のウェブCMが批判を浴び、炎上しました。何が問題だったのでしょうか?

木村教授 もう何年も前から実践している、いまさらジェンダー平等なんて古くさいと言いたかったのでしょう。それを子供好きで化粧もして社会問題にも関心がある若い女の人に言わせている。平等どころか差別や格差が現実にあるのに、それがないように見せるずるさが視聴者に伝わった。ジェンダーバイアス(偏見)がきれいに出ていて、発信する人がそれに気づかない。無自覚に偏見を拡散し、再生産しているのは看過できません。

知晴 無自覚と言えば、女性蔑視発言で東京五輪・パラリンピック組織委員会の会長を辞任した森喜朗さんもそうじゃないですか。自分の言っていることが「アウト」って分かってないのでは?

■認識をアップデート
木村教授 気づかなければ何も変わりません。気づくには学ぶしかない。学び続けることで認識がアップデート(更新)されていきます。ジェンダー論は性差や性別による決めつけを捉え直す横断的な学問と言えます。教育学だけでなく法学や政治学などさまざまな学問分野にまたがっています。ジェンダー論を学ぶ意義について学生たちには「視野が広くなり、いろんな問題に気づく柔軟性が得られる」とメリットを強調しています。

知晴 そうなのですね。先生の話を聞いて、もっと学んでみたくなりました。おすすめの本も教えてください。

■木村ゼミ出身者の今
パートナー制度に意欲 簾内光(すのうち・ひかる)さん(27)=2017年卒、勤務先・函館市役所

 名刺には多様な性の在り方を認め合う虹色のデザインを施している。函館市の市民・共同参画課の主事。LGBTなど性的少数者のカップルを婚姻に相当する関係と公的に認める「パートナーシップ制度」の導入関連経費が新年度予算案に盛り込まれ、活躍が期待されている。

 道教大在学中、技術家庭科が二十数年前まで男女別学だったことを知り、中学校の教科書を卒論のテーマにした。掲載されている写真や挿絵をジェンダーの視点から分析。「性別による役割分業の意識が知らず知らずのうちに刷り込まれ、再生産されていることが分かった。今まで気づかなかったことに気づき、問題意識を持てるようになったのは木村ゼミで学んだおかげ」

 入庁4年目で、この4月に同課配属となった。パートナー制度実現に向け「札幌市などの先行自治体を参考に、より良い制度を作りたい」と意欲的だ。

 日本のジェンダーギャップ指数が低い理由や学生に読んでほしい本など、木村教授の補講はこちらから。

<略歴>きむら・いくえ 1976年函館生まれ。北海道教育大大学院修士課程修了後、2006年に東京学芸大大学院連合学校教育学研究科博士課程修了。専門は教育社会学。09年に道教大函館校に着任し20年から現職。44歳。

<取材後記> 「スチュワーデス試験 保母さんらが殺到」という見出しの新聞記事を見つけた。1997年5月10日の北海道新聞夕刊に掲載されたもの。記事の中に「看護婦」の言葉も。職業上の性差別は関連法の改正に伴って今では絶対に使わない表現だが、無自覚な偏見に気づく「学び」は記者にも求められる。(K)

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