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日米首脳会談 緊張高めぬ対中国外交を

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 菅義偉首相が訪米し、バイデン大統領と初めて対面で会談した。

 両首脳は新型コロナウイルスや気候変動といった国際社会共通の課題や北朝鮮問題などについて、連携を強化することで一致した。

 いま世界は一国では対処できない懸案が山積する。日米が主導して国際協調を立て直し、解決への役割を果たさねばなるまい。

 会談の最大の焦点は、覇権的動きを強める中国への対応だった。

 両首脳は東・南シナ海における力による現状変更の試みと威圧的行動に反対することで一致した。

 地域の安定を損なう動きを許してはならない。国際社会が結束して抑制を図る必要があろう。

 会談では抑止力強化でも合意したが、軍事的連携の色合いを強めれば、逆に緊張を高めかねない。

 その点で気になるのは、共同声明に「台湾海峡の平和と安定の重要性」を明記したことである。

 日米首脳の共同文書に台湾を盛り込んだのは1969年、佐藤栄作首相とニクソン大統領の会談以来だ。中国との対立姿勢を鮮明にする米側の意向が強い。

 共同声明で「平和的解決」と「率直な対話の重要性」を強調したのは当然だ。

 日本は平和憲法を持つ国として米中の橋渡しをする役割も果たし、地域の安定を目指して双方に働き掛ける外交が求められよう。

■追従脱却には程遠く

 日本の歴代政権は対米追従が目立ち、安倍晋三前政権ではそれが顕著になった。

 米国の政権交代を受けての今回の会談で、そうした関係が改善されるのかも注目された。

 だが結果は、追従脱却には程遠かったと言わざるを得ない。

 象徴的だったのは、日本側が、一貫して慎重だった台湾問題の声明への明記を受け入れたことだ。

 日本は72年の日中国交正常化以来、「一つの中国」の原則を堅持し、台湾への言及は避けてきた。

 日本の意に反し、中国を「唯一の競争相手」とする米政権の戦略に組み込まれた感が拭えない。

 声明には、中国が領海侵入を繰り返す沖縄県・尖閣諸島を、米国の対日防衛義務を定めた日米安全保障条約5条の適用対象とすることも明記された。

 台湾明記がその見返りだとすれば譲歩が過ぎないか。

 近年、自衛隊は米軍との一体化を進め、集団的自衛権の行使を可能にした安全保障関連法に基づく米艦防護などを実施してきた。

 米側は台湾有事でそうした後方支援を期待しているとみられる。

 台湾問題で武力行使も辞さないとする中国の姿勢は看過できないが、自衛隊の派遣は、根拠となる安保法自体に違憲の疑いが強い。

 米国に対しては、海外での武力行使を禁じた憲法の下、日本ができることと、できないことの線引きを明確にし、毅然(きぜん)と伝えていかなければならない。

■是々非々での連携も

 米側の対中強硬姿勢の背景には、与党民主党が新疆ウイグル自治区や香港での人権弾圧をとりわけ問題視していることがある。

 バイデン政権はウイグルの現状を「ジェノサイド(民族大量虐殺)」と指弾し、来年の北京冬季五輪ボイコットにも一時言及した。

 米国や欧州連合(EU)は制裁に踏み切った。一方、日本は根拠となる法律がないとして慎重だ。

 声明では「深刻な懸念を共有する」との表現にとどめたが、日本も国際社会とともに、中国に対し責任ある行動を促していかなければなるまい。

 バイデン政権が重視するもう一つの政策が気候変動への対処だ。

 解決には世界2位の経済大国・中国の協力が欠かせない。米国は特使を送り、この分野では手を結ぼうとするしたたかさも見せる。

 日本にとっても、北朝鮮の拉致や核・ミサイル問題を巡り、中国の協力と理解が不可欠だ。

 新型コロナの感染対策などを含め、共通の利益を有する分野では連携を模索する是々非々の外交戦略が重要になろう。

■経済問題 説明が必要

 米中のはざまで日本が難しい対応を迫られるのが経済分野だ。

 米国との協力に偏り、中国に対抗策を取られれば、中国と緊密に結びつく日本経済は大打撃を受けかねない。

 日米会談では、ハイテク製品に不可欠な半導体を含むサプライチェーン(部品の調達・供給網)の構築で連携するほか、高速大容量通信規格の推進、人工知能(AI)など先端技術の協力で合意した。

 日本にとっては安全保障面からも調達網の多様化は必須だが、今回の日米協力を中国が対中包囲網と受け取り反発する懸念もある。

 政治的対立が経済に影響を及ぼさぬよう、中国側に調達多様化の必要性などについて、丁寧に説明することも必要ではないか。

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