PR
PR

鏡に映る心配事

[PR]

飲食店や商業施設で壁や柱を覆う鏡に戸惑うことがある。誤ってそちらに進んでしまうことも。待ち合わせで鏡の中に映った知人に手を振ってしまった朝永振一郎博士は「かがみ再論」で、「気がつくと待ち人はうしろから来ているので、結局柱に向かってにこにこしていることになり、間の悪いことになる」と書いた▼奥行きがあるような錯覚は場所の窮屈さをごまかし、商品が豊富にあるように見せる。いわば商売の知恵だ。そこに何かがあるように誤解した時は、己の気恥ずかしさを少し我慢すればよい▼しかしながら、生命や生活に関わると話は変わってくる。地震や火事の時、鏡に惑わされることもあろう。「出口に向かって逃げたと思ったらかがみにぶつかってしまうということはないか」。博士の心配ももっともである▼菅義偉政権が子どもに関する政策の司令塔となる「子ども庁」設置の検討に入った。担当相を置き、いじめや虐待、少子化などの課題に一元的に取り組むというが、新設が別の縦割りを生むようでは元のもくあみだ▼国会ではデジタル庁創設などを盛り込む関連法案も審議されている。組織再編が鏡のような見せかけの混乱を招かぬよう注視したい▼鏡には万引防止の効果もあるそうだ。個人情報の取り扱いも課題となるデジタル庁である。国民の監視に悪用されまいか。そんな懸念も鏡に映る杞憂(きゆう)であってほしい。2021・4・8

PR
ページの先頭へ戻る