PR
PR

<そうなのねゼミ>1 #マーケティング 「買われる仕組み」を追求 小樽商大ビジネススクール・近藤公彦教授

 大学には数多くの学問がある。どれも奥深く、時には驚きや感動が広がる世界だ。そんな学問の世界を分かりやすく紹介するのが今日から始まる「そうなのねゼミ」。「夢さぽ大学」の学生が道内の研究者を訪ねて学ぶという想定のシリーズで、1回目は3年生の知子さんが小樽商科大学ビジネススクールの近藤公彦教授からマーケティングについて教わった。(青山実)

知子 こんにちは。私は広告業界に興味を持っているのですが、マーケティングがとても大事だという話をよく聞きます。マーケティングとは何ですか。

近藤教授 簡単に言うと、お客さんに買ってもらえる商品やサービスを生み出し、業績を伸ばす仕組み作りのことです。マーケット(market=市場(しじょう))にingが付いた言葉なので語源的にも市場を動かすといった意味合いがあります。実際には市場分析や商品開発、販売戦略の検討などに至るまで長期にわたる活動なんです。

知子 マーケティングは売り方を考える取り組みということですか。

■究極は販売を不要に

近藤教授 それも必要ですが、本質的にはお客さん、言い換えると顧客や消費者に「いかに買ってもらえるか」を考える取り組みです。経営学者のドラッカーは「マーケティングの理想は販売を不要にすることだ」と言いました。顧客を理解し、商品とサービスを顧客ニーズ(必要性)に合わせ、販売促進活動をしなくても自然に売れるようになるのが究極の姿だという訳です。「顧客満足」を実現することが何より大事なのです。

知子 学問としてのマーケティングはどのようなものですか。

近藤教授 市場の中で消費者や企業を観察し、行動の動機やパターンを分析して理論化します。さらに時代の変化に即した経営戦略や分析方法も研究します。マーケティングは複数の活動を含みますのでひと言で表現できる訳語がなく、英語がそのまま使われています。

知子 マーケティングの手順を教えていただけますか。

近藤教授 一般的には企業を取り巻く状況の分析に始まり、目標や戦略の決定、行動計画の立案、結果の検証が順に行われます。一例として教育産業に参入する企業があるとしましょう。状況分析ではその企業の強みや弱み、今後予想される時代の変化を調べていきます。次に目標や戦略を決めるために市場を細かく分けて対象は小中学生か高校生か、必要な教育サービスは対面授業なのかネット配信なのか、地域は都市部が有利か地方がいいのか、一つ一つ調査や分析をして実現性の高いものを探ります。この辺りが明確になれば適切な価格や効果的な宣伝方法などの検討、計画の実施、検証へと進んでいくのです。

知子 マーケティングはどのような歴史をたどってきたのですか。

近藤教授 期間も各時代の大きな課題も諸説ありますが、大まかに1.0から4.0まで四つに分けられます==。最初は1900年ごろから60年代で大量生産の時代です。当初は大量に造ってもすぐには売れず、商品を売り込むことが課題でした。次の70年代は大量廃棄や公害が発生してきたため、消費者の気持ちを酌みながら需要を伸ばすことが求められたのです。

 90年代にはインターネットが登場し、消費者が情報を入手しやすくなりました。市場にモノがあふれて売れ行きが鈍くなる成熟化が進み地球温暖化で社会の再構築も必要になると、商品の社会的な価値を意識したマーケティングが増えてきました。

■ビッグデータ利用へ

 2000年以降は、スマホが必需品となってツイッターなどのソーシャルメディアが発達し、自動車のシェア化などモノの所有より利用に重点を置くビジネスの「サービス化」が進んでいます。このデジタル記録も含めてビッグデータが利用され始めると、企業は消費者の詳細な記録を基に新たな価値を持つ商品やサービスをつくれるようになりました。この状況は企業と消費者による「価値の共創」とも表現でき、それを前提にしたデジタルマーケティングが行われる時代を迎えているのです。

知子 そうなのですね。マーケティングの世界はとても広そうです。

■世界を深く知る手段

近藤教授 皆さんにとっては世の中を知る手段の一つにもなると思いますよ。それは一生役に立つはずです。

■ゼミ出身者の今 コロナ下で商品開発
波田菜保子さん(27)=2017年卒 勤務先・兼松

 近藤ゼミはマーケティングの実践の場として正式に登記した株式会社を運営しており、それにひかれて入りました。ゼミの会社では実際に対象を絞って有効な販売戦略を打つ経験ができ、非常に面白かったことを覚えています。現在は総合商社で食品原料を輸入し国内で委託加工をして商社+メーカーの立場で大手スーパーやコンビニに販売しており、マーケティングはよく使っています。このコロナ禍でも初期に市場調査をして、在宅勤務者の中で普段はスーパーの利用が少ない層を対象にした商品を開発し、売り上げ増につなげました。仕事ではつい「売りたい商品」に気持ちが傾きがちですが、「買ってもらえる商品」こそ喜ばれ、取引関係も長続きします。マーケティングはそのように視点を変えたり視野を広げたりすることにも役立っています。

<略歴>こんどう・きみひこ 1961年生まれ、京都市出身。神戸大学大学院経営学研究科博士後期課程単位取得退学。小樽商大助教授などを経て2004年から現職。14年副学長。日本マーケティング学会理事。59歳。

<取材後記> 最先端のマーケティングでは無意識の本音を脳波で調べて商品開発につなげているという。今は協力者がいる調査なのだろうが、いずれ消費者が気付かないうちに心の奥深くにある本音が広範に収集される時代が来るかもしれない。高度なマーケティングには高度の倫理観が必要になりそうだ。(青)

 このシリーズは随時掲載します。

PR
ページの先頭へ戻る