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<回想の世界一周 僧侶の宗教見聞録>1 プロローグ 人間の本質、聖地で探究

 皆さん、こんにちは。「回想の世界一周 僧侶の宗教見聞録」を連載させていただきます上田隆弘と申します。函館市的場町の錦識寺で、住職の父と共に僧侶として勤めております。

 連載では、2019年の3月から80日かけてアフリカや欧州、米国など13カ国を巡った私の旅についてつづります。実は北海道新聞土曜朝刊の別刷り「道新こども新聞 週刊まなぶん」でも「命と平和を考える―お坊さんが歩いた世界の国」という題で連載しており、「みなみ風」ではこども新聞でお伝えできなかった「世界の宗教」にスポットを当てます。

 宗教を学ぶことは人間そのものを学ぶことであり、人間が積み上げてきた歴史を学ぶことでもあります。それがこの旅に出る大きな目的の一つでした。

 私は大学時代、文学部で宗教学を学びました。その時から仏教だけではなくキリスト教や文化人類学、心理学など、さまざまなことに興味を抱きました。その後、大学院で浄土真宗を専門に学ぶうちに、ますます他の宗教や文化に目が向くようになっていきました。

 お寺が何なのかをもっと知りたい。自分の信じる仏教が何なのかをもっと知りたい。僧侶として生きていくとは、そもそもどういうことなのだろうか。浄土真宗の僧侶として納得した上でその職を全うしたい。何事も満足して終わらず考え続けていきたい。私はそう思ったのです。

 そして自分という「こちら側」を知るためには、他者という「あちら側」の存在が不可欠だと思うようになりました。私たちは「私たち自身」だけで独立してできているわけではなく、「あちら側」がなければ「こちら側」も存在しないのです。だからこそ、他の宗教や世界の歴史を学ぶことで仏教という「こちら側」もより鮮明に見えてくるのではないか。違いが分かれば、より仏教や日本の見え方も変わってくるのではないかと考えたのです。

 ユダヤ・キリスト教の「聖書」やイスラム教の「クルアーン」を読んでみると、次々と面白い発見があります。地域や時代、文化が違うと、ここまで考え方も変わってくるのかとわくわくさせられました。また、私たちと似た面や共通するところが見つかると、思わず「うーん、なるほどなぁ」とうなるなど興奮を味わうこともありました。

 大学や大学院では、それらの大部分を本によって学び、本当にかけがえのないものになりました。だからこそ、私はこう思ったのです。「本で学んできたことを現地で見たい!」「これまで本の上で得てきたものを私は現地でどう感じるのだろうか」―。現地に行ってみたくてしょうがなくなってしまいました。それがこの旅を決めた理由です。

 旅に出る前、4年ほど東京や札幌のお寺に勤め、旅のために資金をためるなど、準備を重ねてきました。この旅は学生時代からの学びの集大成と位置づけ、旅に全てを懸けることに決め、出発しました。おかげで帰国後はすっからかんになってしまいましたが(笑)、全く後悔はありません。

 では次回より、私の宗教の聖地を巡る旅の模様をお届けします。ぜひお付き合いください。(錦識寺僧侶・上田隆弘)

<略歴>うえだ・たかひろ 1990年、函館市生まれ。真宗木辺派錦識寺。早稲田大で仏教と宗教学を学び、京都の大谷大大学院で僧侶の資格を取得。2019年「宗教とは何か」をテーマに13カ国を巡り、全国9紙で世界一周記を連載中。読書とコーヒーが大好き。ホームページ「僧侶上田隆弘のお坊さんも自問自答ブログ」でも宗教学を学んだ僧侶の視点から執筆している。

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