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生活保護費判決 生存権軽視容認できぬ

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 国が生活保護基準額を大幅に引き下げたのは生存権を侵害し違憲だと、道内の受給者が訴えた裁判で、札幌地裁はきのう、請求を棄却する判決を言い渡した。

 厚生労働相に広い裁量を認めた上で、判断や手続きに裁量権の逸脱や乱用はなく、引き下げは違憲ではないとした。

 だが、引き下げの算定方法は受給者に明らかに不利だった。困窮の度合いを増している原告の厳しい生活実態に向き合ったとは言えず、容認できない判断だ。

 国の決定は憲法25条が保障する最低限度の生活を営む権利を軽視したと指摘せざるを得ない。

 生活保護の意義を踏まえ、国はあり方の見直しを検討すべきだ。

 国は2013~15年、生活保護費のうち衣食や光熱費などの生活扶助の基準額を、平均6・5%、最大10%引き下げた。年間の削減総額は670億円にのぼった。

 道内の受給者約130人が、国の決定に沿って扶助額を引き下げた札幌や苫小牧など居住する市と道を訴えていた。

 厚労省は引き下げにあたり、基準額に主に物価下落を反映させる手法を採用した。ただ、専門家の部会で検討しておらず、原告側は不当だと主張した。

 だが判決は「物価を考慮するかは厚労相に委ねられ、専門家が検討しなくても裁量権の逸脱や乱用にはならない」と指摘した。

 その上で「厚労相には国の財政事情を含めた判断が求められる。原告の生活は最低限度を下回っているとは認められない」として原告側の訴えを全面的に退けた。

 厚労省は原油が高騰した年を物価下落の起点とし、受給世帯が頻繁には購入しないパソコンなどの価格下落を反映させていた。

 これでは受給者が物価下落の恩恵を受けないまま、生活扶助費だけが減らされる不利益を受けることになろう。なぜこのような算定基準を採用したのか、厚労省から納得のいく説明はない。

 大幅引き下げありきの恣意(しい)的な政策決定との疑いが消えない。

 12年にはお笑い芸人の親族の生活保護受給が報じられ問題視された。同年末の衆院選で政権復帰した自民党は、生活保護1割カットを公約に掲げていた。

 当時の安倍晋三政権の公約の実現に向け、厚労省は不自然な手法を持ち出したのではないか。

 生活保護は公助の要だ。コロナ禍でその重要性は増している。困窮する人たちをスムーズに受給につなげる取り組みこそ重要だ。

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