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<脳幹出血との闘い 山本記者の体験記>1 発症 眼前に閃光「あ、立てない」

 北海道新聞くらし報道部の山本十三介(58)です。2019年4月、突然、自宅で倒れ、救急搬送されました。呼吸や血圧を保つなど生命活動の基本を担う脳幹からの出血でした。1カ月超の入院、リハビリを経て19年6月に職場復帰し、昨年9月から取材記者として記事を執筆しています。同じ病で命を落とした方、半身まひなどで闘病中の方もいます。私の経験を記すことで、この病の予防に役立てばと願っています。発症からこれまでについて4回連載し、その後は毎月1回程度、病後についてお伝えします。

 大きなドーナツのような入り口の円筒型医療機器。今年2月17日。私は札幌市中央区の中村記念病院でコンピューター断層撮影装置(CT)検査を受けていた。頭をしっかりと固定され、ドーナツの輪の中に頭から吸い込まれた。あの日から、もうすぐ2年になるのか…。

■骨が溶けたよう

 2019年4月12日。

 当時56歳の私は午前10時すぎ、自宅のベッドの中で体の異変に気づき、目を覚ました。痛みはない。だが目の前に閃光(せんこう)がちらつき、見えているのか、見えていないのかがよく分からない。それより深刻なのは下半身だ。骨も筋肉も溶けてしまったようにぐにゃぐにゃで立ち上がれる状態ではなかった。

 「脳をやられた」。直感した。ベッドから転がり落ち、はいつくばって居間に向かった。二つ考えた。一つは救急車を呼ぶこと。もう一つは仕事の連絡だ。

■「救急車を呼べ」

 倒れた日は、市町村長選挙など、4年に1度行われる統一地方選挙告示の前々日だった。編集局は選挙が近づくと、紙面の準備のためかなり忙しくなる。この日も午後に出勤する予定だった。

 予定していた仕事は同僚に託すしかない。携帯電話を鳴らすと、運良くすぐに応答があった。大声で引き継ぎを頼むうちに相手の声がどんどん遠くなり、聞こえなくなる。叫ぶように続けた。

 異変に気づいた同僚がもっと大きな声で怒鳴った。「今すぐ、救急車を呼べ!」。家族が119番した。

 搬送時、意識はあった。救急隊員から搬送先の病院を2カ所から選ぶように聞かれて、通勤途中にある中村記念病院と伝えたことも覚えている。

■予防できたかも

 診断は、高血圧性の右脳幹出血。脳幹の「橋(きょう)」という部位の出血だった。中村記念病院脳神経外科で医師から病名を告げられた際、「ノウカン? 脳間? 大脳と小脳の間に血がたまったのかな」と、ぼんやりした意識で思った。

 その時、脳幹は呼吸や血流、筋力調整など生命維持に関与する中枢で、その血管が破れて出血したことの重大性を認識していなかった。

 前触れもなく突然起きるのが脳内出血(脳幹出血を含む)の特徴だが、発症を防ぐチャンスがなかったわけではない。きちんと対応していればと、後悔は大きい。

 発症した前年の18年6月に受けた人間ドックで、脳卒中を引き起こす要因の一つである糖尿病の結果が出て医療機関への紹介状を受け取っていた。だが「当日の体調のせい」と勝手に解釈し、放置してしまった。

 体重の急激な減少もあった。減量目的で自転車通勤し、短期間で5キロほどやせ、効果に驚いていた。ところが、それは糖尿病の悪化で体重が減っていたということも後から分かった。

 5月18日に退院するまで37日間の入院生活が始まった。

■脳幹出血とは

 脳幹出血は、脳の中の脳幹という部位に出血が生じたさまざまな症状を起こす病気だ。日本人の死因でがん、心疾患、老衰に次いで4番目に多い脳卒中、その中でも脳の血管が破れる脳内出血の一つだ。

 脳幹は、脳の一番奥深い部分にあり、大脳を支えるような幹のような形をしている。成人で長さは約7.5センチ、太さは親指程度と小さいが、呼吸、心拍、消化、筋力などの調節を担い、生命維持に深く関わる重要な働きをしている。中脳と橋(きょう)、延髄で構成されている。脳幹をも含めた脳全体の機能が失われると「脳死」になる。

 脳内出血の最大の原因は高血圧だ。高血圧によって脳の細い動脈が次第にもろくなり、ついに破れて出血する。前兆はほとんどない。

 脳幹出血を発症すると、吐き気、めまい、頭痛などさまざまな症状が表れる。出血量が多い場合には、意識消失や呼吸停止が起こり、命に関わることがある。また、出血で一度壊れてしまった神経細胞は元に戻ることはないので、首から下が動かないなど深刻な後遺症が残ることがある。

 治療法は、脳の奥深い場所なので手術は困難だ。人工呼吸器による呼吸の管理や、降圧剤などによる血圧の管理などを行って、出血が吸収されるのを待つことになる。

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