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<デジタル発>朝が楽しくなる絵本「ねぐせきょうだい」 作者・加賀城さんの「見立て思考」

 起きるのがしんどい。出勤の支度が慌ただしい。いつからこんなに朝が憂鬱(ゆううつ)になってしまったのだろう。そんな毎朝のモヤモヤを愉快な気持ちに変えてくれる絵本が2月5日に発売された。タイトルは「ねぐせきょうだい」。札幌在住のアーティスト加賀城匡貴さん(45)が初めて手掛けた絵本だ。「毎朝がたのしい」。そんな言葉が添えられた作品は、新型コロナウイルス禍の今、子どもだけでなく大人の心にも染みる。絵本の世界観と加賀城さんの思考をのぞいてみた。(文・写真/報道センター 門馬羊次)

 かがじょう・まさき 1975年、札幌市出身。英国ボーンマス芸術大映画学科中退。1999年、お笑いグループ「スケルツォ」を立ち上げ、道内外でライブを展開。札幌国際芸術祭への参加、カードゲームのプロデュース、ラジオ番組出演など多彩に活動している。
 かがじょう・まさき 1975年、札幌市出身。英国ボーンマス芸術大映画学科中退。1999年、お笑いグループ「スケルツォ」を立ち上げ、道内外でライブを展開。札幌国際芸術祭への参加、カードゲームのプロデュース、ラジオ番組出演など多彩に活動している。

■毛量ファンタジー

 「グーグーグー」「ピヨピヨピヨ」

 「おはよう」。幼い兄と妹が目覚めると、兄は角のような寝癖を付け、妹は鳥の巣のように髪の毛が爆発していた。

角のような寝癖を付けた兄と、鳥の巣のように髪の毛が爆発した妹
角のような寝癖を付けた兄と、鳥の巣のように髪の毛が爆発した妹


 「ねぐせきょうだい」は、兄と妹が呪文のような不思議な言葉を言いながら、奇想天外な寝癖を見せ合い、何かに見立てて楽しむストーリーだ。

 例えば、兄が「ピラピラピラ…」、妹が「パルパルパル…」と言って見せた寝癖は、兄が「ピラミッド」、妹が「パルテノン神殿」の形。

ピラミッドとパルテノン神殿のような壮大な寝癖
ピラミッドとパルテノン神殿のような壮大な寝癖


 寝癖は毎朝、どんどん形を変える。

 世界最高峰のあの山やオホーツク海に突き出た北海道のあの半島も。毛量は想像をはるかに超え、リズミカルな言葉とともに変幻自在な寝癖が登場する。

 「寝癖って、心温まるじゃないですか。何もネガティブなことを感じない。寝癖で話を膨らませていくのが楽しくて」と加賀城さん。「現実の毛量ではあり得ないでしょうから、『毛量ファンタジー』ですね」。いたずらっぽく笑った。

■朝が好き

 子どもの頃から朝が好きという。「朝を迎えると刷新される感じがしますよね。でも、多くの人は寝る前に明日は仕事だ、ちゃんと起きなきゃって感覚が普通だと思うんです。だからこそ、『毎朝が楽しい』と思える作品が、新鮮に響くかなと考えました」

 ストーリーも絵も加賀城さんのオリジナル。紀伊国屋書店札幌本店(札幌市中央区)で児童書を担当する工藤由起子さんは「『もしも…』の世界が楽しい絵本。繰り返しの言葉に子どもたちが楽しい気持ちになれます」と話す。

 出版元はシリーズ累計数万部の人気絵本「おばけのマール」を手掛けている中西出版(札幌市東区)。長年、絵本の出版に携わってきた同社常務の河西博嗣さん(57)は言う。「加賀城さんの絵本は、既成概念に縛られていない。教育的な視点でもなく、感動作というわけでもない。創造性が豊かで、こんな絵本はこれまでなかった」。道内はもちろん、東京など道外の書店からも引き合いがあるという。

■人を楽しませたい

 加賀城さんは少年時代から人を楽しませることが好きだった。友だちと野球をしていても、プレーに加わるのではなく木に登って試合を実況し、盛り上げた。高校時代にはクラスメートを誘って人気番組「欽ちゃんの仮装大賞」の正月の生放送にも出演。雪崩を表現した仮装だったが、「10点で不合格」(加賀城さん)。審査員から「意外性が飛躍しすぎていた」と評されたという。

 高校卒業後に英国に留学。現地では、洗練された中にユーモアを織り交ぜたアートや音楽に感化され、表現者として「人を笑わせたい」という思いを強くした。

 帰国後、映像作家として活動しながら、1999年に友人たちと「スケルツォ」を立ち上げた。映像や写真で景色や物を何かに見立てて、ユーモアに昇華する。洗練された音楽も融合した独特な世界観のライブパフォーマンスにファンも多く、全国ツアーを展開したこともある。

絵本「ねぐせきょうだい」
【体裁】A4変型判・32ページ
【定価】1100円(税込み)
【販売】道内の主要書店やインターネット通販で取り扱い

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