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<北海道 移住者たちの選択>8 脱サラ移住目指すも、会社から想定外の慰留

 北海道へ移り住んだ人たちを探るシリーズ<北海道 移住者たちの選択>。ニセコ編8回目は、子供の独立を期に横浜市から夫婦で移住した佐藤哲司さん(56)と祥江さん(55)です。一目で気に入った後志管内蘭越町。自分たちのカフェを開こうと決め、東京に本社のある勤務先の大企業から退社することを決意します。ところが、会社からは「残ってほしい」と強く慰留され、想定外の「サラリーマンを続けながらの北海道移住」に。そんなこと、できるの?(文・写真/倶知安支局 桜井翼)

蘭越町に移住した佐藤哲司さん、祥江さん夫妻。町の中心部に開いたカフェ「けらぴりか」の店内で=2021年2月5日
蘭越町に移住した佐藤哲司さん、祥江さん夫妻。町の中心部に開いたカフェ「けらぴりか」の店内で=2021年2月5日

■「清流日本一」のまちへ

 ニセコ地域の隣、蘭越町。「清流日本一」に輝く尻別川が流れ、豊かな自然が育む道内有数の米どころの町中心部に、2020年8月、空き家をリフォームしたカフェ「けらぴりか」がオープンした。

 1月中旬。平日の正午ごろ、お店を訪ねると店内は10人ほどの女性客でにぎわっていた。友人と来店し、ランチをしていた蘭越町の会社員、高橋華恵さん(51)は「蘭越にこんなにオシャレなカフェができるなんて」と、うれしそう。

 店を切り盛りするのは、妻の祥江さん。ランチタイムには、手作りにこだわったワンプレートランチなどを月替わりで提供する。蘭越産のカボチャを使ったサラダや、道産のマダラのムニエルに金柑(きんかん)ソースを絡めるなど、地元の食材に工夫を凝らした料理がいっぱいだ。

1月のワンプレートランチ。地域の食材をふんだんに使う。これで800円。プラス200円でデザートと飲み物が付く=2021年1月16日
1月のワンプレートランチ。地域の食材をふんだんに使う。これで800円。プラス200円でデザートと飲み物が付く=2021年1月16日


 新型コロナウイルスの感染拡大が続く中での開店だったが、口コミで評判が広がり、ニセコ地域から訪れる客が絶えない人気店になっている。

 夫の哲司さんは、国内有数の電機メーカーに勤めている。「いつか夫婦で地方に移住したいね」。数年前まで、そんな会話を2人でよく交わしていた。地方への移住話は、首都圏に住むサラリーマンなら誰もが漠然と抱きつつも、多くは「夢」にすぎない。

 実現に動きだすきっかけは、2016年春。哲司さんが51歳のときに訪れた札幌への転勤命令だった。スキーを愛好する哲司さんが北海道のとりこになるのに時間はかからなかった。「脱サラして移住しよう」。横浜にとどまっていた祥江さんも、子育てが終わった後の第二の人生を北海道で過ごそうと心を固めた。

 2018年秋。哲司さんは再度の異動で川崎市の工場勤務に戻ったが、2人の意志は変わらなかった。「2020年春に退職します」。ちょうど、役職定年の55歳を迎えるタイミングで、会社に退職を申し出た。

 だが、会社からは想定外の反応が返ってくる。「辞めてもらっては困る。残ってくれないか」

 既に店舗兼住宅に、と見込んだ空き家を購入済み。脱サラせずに地方へ移住することに。佐藤さん夫妻の模索が始まった。

(年齢・肩書は掲載当時)

=シリーズ第9回は3月2日に配信します

■シリーズ<北海道 移住者たちの選択>
 北海道に移り住んだ人たちが、移住前に何を思い、葛藤し、どんな希望を持って「北海道」を選んだのか、その一端を紙面で紹介しつつ、決断の舞台裏を電子版で詳しくお伝えします。
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 記事の一部は、多言語サイト「The Hokkaido Shimbun Press」で、5言語(英語、中国語=繁体、簡体=、韓国語、タイ語)に翻訳し、随時、配信します。
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