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コロナ法改正 罰則の必要性あるのか

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 政府がきのう、新型コロナウイルス対策を巡り、罰則の強化を柱とする新型コロナ特別措置法や感染症法などの改正案を閣議決定し、国会に提出した。

 憲法は国民の幅広い自由を保障する。強制力を伴う私権制限は、慎重の上にも慎重を期すべきだ。

 政府・与党は来月上旬の成立を目指すが、あまりに拙速である。

 改正案では、知事による営業時間短縮や休業の命令に違反した事業者や、入院を拒否した感染者らへの罰則を新たに設けた。

 一方、要請・命令に応じた事業者への損失補償については明記を見送り、支援措置を講ずるとの内容にとどめた。これでは事業者の不安は解消されまい。

 支援の枠組みに関する法整備は昨年実現できたはずなのに、感染が急拡大してから動きだした。

 その上、行政側の責任は曖昧にしたまま、罰則を盾に、政府や自治体の命令に従わせるようなやり方は国民の理解を得られまい。

 後手批判を受けたこれまでの対策の検証も乏しい。力を入れるべき点がずれている。

 来週始まる野党との協議を通じ、修正することが欠かせない。

 そもそも罰則が感染抑止に資するのかはっきりしない。政府は休業要請や入院を拒否した実数を把握しておらず、罰則導入の科学的な根拠を示していないからだ。

 加えて公平な法の執行には課題も多い。飲食店は東京都内だけでも8万店を超す。命令違反の実態調査は極めて難しい。

 改正案では、緊急事態宣言の前段階でも知事が休業などの命令ができるようにした。しかし発令要件は明確でなく、恣意(しい)的に運用される懸念は拭えない。

 罰則の中でとりわけ問題なのは、時短命令違反などには行政罰の過料を科すのに対し、入院拒否者らには懲役刑を導入する点だ。

 コロナ感染者の中には、入院による仕事への影響や、周囲からの差別・偏見を心配する人もいる。

 個々の事情や不安に配慮せず、対策の強制力を強めるばかりでは、体調が悪くても検査を受けなかったり、健康状態を隠したりする人を増やすことにもなろう。

 今は、重症化しても入院できず死亡する人が相次いでいるのが実情だ。医療体制の整備が先である。

 かつて強制収容された結核やハンセン病の患者は、著しい人権侵害を受けた。その反省に立ち、感染症法には患者が置かれた状況を深く認識することが明記された。

 過ちを繰り返してはならない。

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