
12 フィードバックが成長を促す 森順子
模擬面接などをしているとき、もっとこうした方が良いのでは、と思いフィードバックを行う。フィードバックを活かした学生さんは、内定をしっかりと手に入れているように思う。
学生さんに限らず、私も今でもさまざまなフィードバックを受ける。分かりやすいのは大学の授業評価アンケートだろうか。先生が学生さんの成績をつけるのと同様に、学生さんからも先生の授業がどうだったかアンケートを実施する学校が多い。そのアンケートを見て、スライドをもう少し増やした方がいいか、ワークショップのタイミングはもっと早い方が良いのか等、次への授業作りにつなげることができる。客観的に自分を見られる機会でもある。
新人アナウンサーの頃、中継先で焦ってしまい、食事のシーンで慌てて茶わんを持ったことがあった。その数日後に視聴者から私宛に手紙が届き、「あなたの茶わんの持ち方はおかしい」と書かれていた。いわゆるクレームである。新人だったこともあり、しばらくひどく落ち込んだ。
その気持ちが変わったのは、アナウンサーの先輩との帰宅中である。ある日、先輩が駅に貼られていた自分の番組告知ポスターに落書きされているのを見て、「ありがたいね。こうやって書くってことは、気にしてくれているからかもしれないからね」と話してくれたのだ。私だったら落書きされるのは嫌だと思ったが、捉え方ひとつでプラスにもマイナスにもなるのだと気づかせてもらい、その後、茶わんの持ち方を指摘してくれた視聴者には感謝の気持ちが湧いた。もしその手紙がなかったら、私はずっと同じことをしてしまったかもしれない。以後、中継先で食事をする際、茶わんの持ち方を間違えたことはない。マイナスの「クレーム」を、プラスの「フィードバック」に変えることができた体験だった。
エントリーシートの添削や模擬面接では、関わる人が多ければ多いほどたくさんのフィードバックがあると思う。判断に迷うこともあるかもしれないが、すべてあなたのためのフィードバックに他ならない。指摘してもらったことを自分で選択し、よりよい自分づくりにつなげていってほしい。
【講師プロフィール】
森 順子 教育コンシェルジュ/キャリア教育コーディネーター
元テレビ北海道アナウンサー。在勤中は「TVh道新ニュース」キャスターなどを務める。
現在は(株)ハッピーアロー代表取締役。大学をはじめ、学校でのキャリア教育講師や就職支援、企業・自治体での研修講師などを務めている。