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歴史の教訓

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今日の社会や文明は、歴史の積み重ねの上にある。歴史とは単に過去の記録にとどまらない。そこから何かを学び取るからこそ、歴史は生きてくる。半藤一利さんの著作にそう教わった▼著書「昭和史」(平凡社ライブラリー)で五つの教訓を示した。「国民的熱狂」「抽象的観念論」「エリート小集団主義」「国際的常識の欠如」「短兵急な発想」。とりわけ重く見たのが「国民的熱狂」を防ぐ言論の自由・出版の自由だった▼2012年4月、自民党が発表した憲法改正草案は「公益及び公の秩序」を害する場合、言論の自由は認められないとする条文を示した。「いくらでも広げて解釈が可能で権力者の利益と同義である」。半藤さんは怒り心頭に発し、報じた新聞を引き裂いてしまったそうだ(「そして、メディアは日本を戦争に導いた」東洋経済新報社)▼11歳で日米開戦を迎え、東京大空襲を生き延びた。敗戦を口にした区議の父は3度も警察に連行された。隣組の密告があった。扇動、同調圧力、異論排除。どれも過去の話ではない▼当事者や資料に丁寧にあたり、綿密な取材で冷静に分析する。その姿勢は歴史研究のお手本だ。保阪正康さんと双璧をなす文筆家が亡くなったことは、社会の損失と言っていい▼「過去に目を閉ざす者は現在にも盲目になる」。元西ドイツ大統領ワイツゼッカー氏の言葉がこれほど胸に刺さる日はない。2021・1・14

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