PR
PR

長引く再審 迅速化へルール整備を

[PR]

 再審のあり方が問われている。

 1966年に静岡県で起きた強盗殺人事件で死刑が確定した元プロボクサー袴田巌さんについて、最高裁は昨年末、再審開始を認めなかった東京高裁決定を取り消し、審理を高裁に差し戻した。

 無実を訴え続けた袴田さんは84歳だ。残された時間は多くない。最高裁自ら再審開始を決めるべきではなかったか。疑問が残る。

 事件から半世紀が過ぎた。一連の経緯からは、時間がかかり過ぎるという現行の再審制度の問題点が改めて浮かび上がる。

 再審の迅速化へ向け、国は制度改正に踏み出すべきだ。

 袴田さんは、働いていたみそ工場の専務一家4人を殺害し現金を奪ったなどとして罪に問われた。

 裁判開始から1年後にみそタンクから見つかった血痕のついた半袖シャツなどの衣類が最重要証拠となり、死刑が確定した。

 再審請求審では血痕が争点となった。弁護側は黒ずむはずの血痕が赤かったため証拠捏造(ねつぞう)が疑われると主張し、最高裁も変色について審理を尽くさないのは「著しく正義に反する」と批判した。

 衣類の証拠能力に疑いが生じているのは明かだ。「疑わしきは被告人の利益に」という刑事裁判の鉄則は再審にも適用される。高裁決定の取り消しは当然と言える。

 最高裁の裁判官5人のうち2人はすぐ再審を始めるべきだと異例の表明をした。激しい議論があったことがうかがえる。東京高裁はこの重みを踏まえ、迅速に手続きを進めるべきだ。

 再審を巡っては袴田さんのほかにも、1979年の大崎事件をはじめ多くで長い年月にわたり再審請求が続けられている。

 再審は具体的手続きが刑事訴訟法に定められておらず、進行が裁判所の裁量に委ねられている。

 再審請求審で検察が被告に有利な証拠を隠し続けようとするケースも珍しくない。これらが再審が長引く背景にある。

 法制化によるルールの整備と証拠開示の義務づけが不可欠だ。

 再審開始決定に対し検察が異議を申し立てて争える仕組みも長期化の要因だ。撤廃すべきである。不服があるなら再審の法廷で白黒をつければいい。

 袴田さんの事件はそもそも強引な捜査が疑われ、死刑判決を書いた元裁判官が「無罪の心証を持っていた」と告白した経緯もある。

 脆弱(ぜいじゃく)な証拠で死刑という重大判断が下された可能性は否めない。経緯の検証も必要だ。

PR
ページの先頭へ戻る