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SNS中傷対策 表現の自由尊重しつつ

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 プロレスラーの木村花さんがインターネットの交流サイト(SNS)で誹謗(ひぼう)中傷された後に急死した問題が刑事事件に発展した。

 警視庁は、木村さんをSNS上で中傷したとして、大阪府の投稿者を侮辱容疑で書類送検した。

 命が失われるという事態の重大さを踏まえ、中傷投稿には厳しく臨むべきだと判断したようだ。

 一方でネットの中傷対策は、表現の自由との両立を図りながら進める必要がある。公権力の介入はあくまでも抑制的であるべきだ。

 利用者やSNS事業者の自律的な取り組みを通じ、ネット空間を健全に発展させたい。

 木村さんは、フジテレビの番組で共演者に怒るシーンが放送された3月以降ツイッターなどに中傷が相次ぎ、5月に亡くなった。

 投稿者は「いつ死ぬの」などと匿名で書き込んだとされる。調べに容疑を認め「態度が許せなかった」などと供述しているという。

 人の尊厳を踏みにじる行為が許されないのは、ネット上も対面の場も同じだ。一人一人がそれを強く自覚したい。

 問われるのは警視庁の判断だ。どのような基準で立件したのかが判然としないからだ。

 今回、自ら名乗り出て遺族に謝罪メールを送った投稿者を書類送検した。別の複数の投稿者の捜査も進めようとはしているようだ。

 警視庁は判断の根拠を説明すべきではないか。それがなければ利用者が混乱し、言論の萎縮も招きかねないだろう。

 侮辱罪の適用が将来、政権批判などにも広がる事態はあってはならない。

 最近、ネット中傷には厳しく対処すべきだという主張が目立つ。自民党は厳罰化を提言し、法務省もその方向で議論を始めた。

 しかし、この動きもまた、表現の自由の制限につながる恐れがある。検討は慎重さが求められる。

 木村さんの死を受け、総務省は匿名の投稿者を特定する際の手続きを簡素化する方針だ。中傷を受けた被害者の迅速な救済につなげてほしい。

 SNS事業者は、社会的責任の重さを自覚し、悪質な投稿の自主的な削除を強化するなど、中傷対策に積極的に取り組むべきだ。

 フジテレビにも責任があるのではないか。放送倫理・番組向上機構(BPO)は、番組によって人権が侵害されたとする遺族の申し立てを受け、審理に入っている。

 演出に問題がなかったか、厳正な調査が不可欠だ。

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