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「寒冷地」手当の基準不明確 来春から中小でも同一労働同一賃金 「非正規不支給」の判例なし 根拠・目的不明なら見直しを

 正規労働者と非正規の不合理な待遇格差を禁じる「同一労働同一賃金」の原則が来年4月から中小企業にも適用される。これまでの判例で通勤手当や扶養手当などの手当は、その目的に照らし非正規のみに支給しないのは違法とされた。一方、北海道労働局によると、道内で多く支給されている寒冷地手当は判例がなく、どんな場合に違法となるか明確ではない。一部の企業には目的が不明の手当もあり、各職場で格差解消に向けた対応が急がれそうだ。

 来年4月から中小企業も対象になるパートタイム・有期雇用労働法は、正規・非正規の待遇差について使用者に説明を義務づけた。北海道労働局によると「慣例だから正社員にだけ手当を出す」という説明では違法となる可能性が高い。

 待遇格差を巡る最高裁判決5件が出された10月中旬以降、北海道働き方改革推進支援センター(札幌)には中小企業経営者らから「正社員だけに支給する手当があるが、非正規にも出さなければならないか」との相談が約20件寄せられた。

 作られた経緯が分からず慣例で出し続けている手当もある。神社の夏祭り参加者に出す「見舞手当」、皆勤者以外もほぼ全員が当たる「精勤手当」、「初霜手当」などだ。本間創センター長は「根拠が不明な手当は見直し、非正規にも支給すべきか労使で考えるよう助言している」と説明する。

 元厚生労働省職員で北桜(ほくおう)労働法務事務所(札幌)の社会保険労務士、田原咲世さんは「各種の手当が増えたのは、使用者が時間外労働の割増賃金を抑えようとした意図もある」とみる。

 割増賃金は1時間あたりの賃金に時間外と深夜は25%、週に最低1日は従業員を休ませる法定休日は35%が上乗せされる。割増賃金の算定に含まれない住宅手当や家族手当を支給し、基本給を減らせば割増賃金が安くなる。「制度化した経緯が不明の手当は割増賃金対策として急きょ作られたのでは」と推測する。

 田原さんは「寒冷地手当は非正規にも出すべきかの判例がなく判断が難しい」と指摘。目的が暖房代の補助なら雇用形態にかかわらず非正規にも支給すべきだとし「寒冷地手当に『有能な人材を確保するため正社員にだけ出す』という理論が成り立つかは微妙」とする。一方、暖房器具の買い替え費補助の意味を持たせ、転勤がある正社員にだけ支給する場合は「不合理な格差とまでは言えない、とも考えられる」と話す。

 また田原さんは「寒冷地手当を廃止し基本給に入れた企業もある」という。この点について労働局は「労働基準法に基づき、基本給の何パーセント分がどの手当なのかを就業規則や雇用契約通知書で明記する必要がある」としている。

 寒冷地手当が非正規に支給されない問題を巡っては札幌地裁で訴訟が進行中だ。道内の日本郵便の契約社員らが今年2月、寒冷地手当を含む各種手当や休暇の正社員との格差を違法として損害賠償を求めたもの。扶養手当などの格差については、同種の訴訟で10月に最高裁が下した判決で違法とされたが、寒冷地手当の判決は出ていない。

 札幌地裁の訴訟で原告を支援する郵政産業労働者ユニオン北海道地方本部に所属し、道内の郵便局で郵便物の仕分け業務に携わる非正規の50代女性は「正社員も非正規も同じ仕事をしているのに、正社員には手当が出て何千円も上乗せされ、矛盾を感じる。会社は『昔からそうだから』と言うだけ。都合よく使われていると思うとやる気が起きない」と胸の内を明かす。

 原告弁護団の平沢卓人弁護士(札幌)は「寒冷地手当には暖房代など冬に増える生活費の負担を補助する目的があり、それは正規も非正規も変わらないはず。裁判所には同一賃金同一労働の趣旨を踏まえた判断をしてほしい」と語った。(編集委員 町田誠)

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