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<みなぶん>ルール無縁?アマ無線の実態は 大型車両など業務に使用/規制追い付かず

 「アマチュア無線が不適切に利用されている」。札幌市のアマ無線愛好家の40代男性から「みなぶん特報班」に情報が寄せられた。公共の電波を利用するアマ無線は、業務での使用を禁止するなど法律で規制されている。行政も適切な通信を呼び掛けているが、違法利用が後を絶たない。規制を無視した無線交信の実態を追った。

 「今、無線を使っていますよ」。10月中旬、投稿者の男性から連絡が入り、札幌市内の建設現場に向かった。「積み込み中」「でっぱったー(出発したの意味)」。無線機から聞こえる会話の通り、ダンプカーが残土を積み、公道に出てきた。

 交信しているのは数人のグループで、互いに作業状況を伝え合い、順番に現場に入っているようだった。アマ無線の使用は現場監督にも内密らしく、周囲を警戒している様子もうかがえる。「(現場監督の)○○さんが真横に張り付いて、いなくなんない。声、出したくても出せなかった」

 アマ無線を業務で使ったことのあるという石狩管内の運送会社社長は、こう明かす。「同じ会社だと、業務用無線を配られていることが多い。だが、複数の会社の運転手が集まる時は、周波数を合わせれば誰もが通信できるアマ無線が、非常に便利。こっそり使っている業者は少なくない」

 この日は、夕方まで6時間ほどの交信内容を確認したが、電波法で義務付けられたコールサイン(識別信号)を発することもなく、現場の出入りなど業務連絡とみられる交信を行っていた。電波法では、業務利用は懲役1年以下または100万円以下の罰金、コールサインの省略は行政処分に従わなかった場合に30万円以下の罰金が科せられる。

 工事現場の施工業者に問い合わせると、担当者は「現場の業者には、アマ無線を使わないように徹底している。ただ、1台ずつチェックしているわけではないので…」と言葉を濁した。

 アマ無線の不正利用の指導や処分を行う北海道総合通信局(札幌)は、違法に利用しているアマ無線に対し、通信中に自動音声で指導・警告を発している。しかし、2019年度の指導・警告回数は1032回と、前年度より393回も増え、1・6倍になった。

 いずれもダンプなど大型車両によるコールサインの省略や、定められた周波数以外を利用する違反が大半だ。札幌を中心に全道各地に広がる傾向にあるという。担当者は「人員態勢が限られており、違反があっても指導・警告できるのは全体のごく一部」と認める。

 総務省によると、アマ無線は災害時の非常通信が認められており、東日本大震災や、近年の大型台風で避難所や災害ボランティアの通信手段として役立った。

 日本アマチュア無線連盟(東京)の正村(まさむら)琢磨(たくま)北海道地方本部長は「違法な利用者が、災害時の通信を邪魔するようなことがあってはならない。日ごろからマナーを守って、万一の際には貢献できるように努めることが大切だ」と強調する。(佐藤圭史)
<ことば>アマチュア無線 無線技術への個人的な興味に基づき、自己訓練や技術的研究を行うための無線通信。「アマチュア無線技士(1~4級)」と「アマチュア無線局」の免許が必要。今年3月末現在、道内のアマ無線局数は3万6635局で、10年前より14%減少(全国は15%減少)。札幌市内の販売店によると、愛好者の多くは70歳すぎの「団塊の世代」という。利用者は、携帯電話のように基地局を介さずに電波を出せるため、携帯が通じない災害時に有力な通信手段となる。


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