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<書評>宇宙考古学の冒険

サラ・パーカック著

遺跡発掘の手掛かり 衛星で発見
評 辻山良雄(書店店主)

 スコップ片手に黙々と地面を掘り、文献などから推測した土地を調査する。わたしが考古学に抱いていた、旧態依然としたイメージは、本書を読み鮮やかに覆された。科学の進化は本当にすさまじいものだ。

 「宇宙考古学」とは、人工衛星からもたらされた地球表面のデータを分析し、そこに認められた痕跡によって、遺跡が眠っていそうな場所を発見する学問である。サラ・パーカックはエジプトを主なフィールドとする、この分野の第一人者。本書では彼女が関わった数多くの発見や、世界で進行中の「宇宙考古学」の現在、そしてわれわれが考古学から学ぶべきことなどが語られる。全編ユーモアを交えた、親しみやすい筆致のせいかとても読みやすく、考古学者の毎日が、感動や興奮、失望も含めリアルに伝わってくる。

 空から地上を見下ろす、考古学者の着目するポイントは、われわれのそれとは大きく異なっている。同じ植物の成長度合いの違いや、自然界にはめったにできない直線の影から、土の下に眠っているものを想像する思考過程には、「そんなふうに見えるんだ!」と驚かされた。そこでは最新の科学技術だけではなく、自然科学のさまざまな知見や、文学の範疇(はんちゅう)である物語を紡ぐ力なども総動員されるだろう(サラが子どものころ夢中になった「インディ・ジョーンズ」も、何かしらの支えとなっているかもしれない)。宇宙考古学とは、まさに科学技術と人文学との幸せな融合なのである。

 世界の重要な遺跡には、中東やアフリカなど紛争が絶えない地域にあるものも多い。そのような場所は遥(はる)か昔から、東西の文化が交わる一方、常に争いにもさらされる。

 サラは、遺跡は「人間の多様性と想像力に驚くことができる場所」だという。過去とは、人間が自分たちを知る合わせ鏡のようなものだが、出土品に目を奪われるだけではなく、その地で人間はどのように生きてきたのかを想像することが肝心だ。宇宙考古学の発展により、人間がより良き未来を切り拓(ひら)いていくことを望んでいる。(熊谷玲美訳/光文社 2640円)

<略歴>
米アラバマ大考古学教授、エジプト学者。衛星画像から遺跡を探すクラウドソーシングのプラットフォーム「グローバルエクスプローラー」を2016年に創設

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