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暮らしと法律

<弁護士に聞く>「住宅ローンが払えない」 持ち家手放さなければいけないの?

写真はイメージです  Photo by iStock
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 新型コロナウイルスの影響で幅広い企業の業績が悪化し、解雇や休業、給与削減のニュースが日々報じられています。収入減に伴う困難の一つは借金返済で、多くの人にとって最も額が大きいのは住宅ローンでしょう。住宅ローンが払えなくなり持ち家を手放した人もいます。どう備えればいいのか、札幌弁護士会の清水智弁護士に聞きました。(聞き手 町田誠)

――コロナ禍で住宅ローン返済に苦しんでいる人がいると聞きます。相談は受けていますか。

 私の事務所では、まだ住宅ローンの相談はありません。札幌弁護士会が行ったコロナに関する電話相談は5~8月に26件を受け付け、このうち「家賃が払えず困っている」との内容が1件ありました。弁護士への相談が多くない背景には、問題が深刻化する前に金融機関が返済を猶予している例が多いのかもしれません。

■遅延損害金の可能性も

――住宅ローン返済が滞ると、どうなりますか。

 金融機関によって異なりますが、一般的に2~6カ月連続で返済がないと、分割払いができる「期限の利益」を失って一括払いを求められますし、ローン残高の年14・6%分に当たる遅延損害金も課せられます。6カ月を過ぎると、金融機関から不動産の任意売却の打診があるかもしれません。任意売却は所有者が家や土地を売った代金をローン支払いに充てる仕組みで、競売に比べて市場の相場に近い売却額が期待できます。引っ越し費用として10万~20万円ほどを手元に残せる場合もあります。

 任意売却のほか保証会社の代位弁済や競売もありえます。代位弁済とは、債務者の代わりに保証会社がローン残金を金融機関に支払うことを言い、その後、債務者は保証会社に返済義務を負います。保証会社は、公的機関である保証協会や金融機関の関連会社が多く、取り立ての厳しさは金融機関と変わらないようです。競売の価格は市場相場の7掛け程度といわれ、家は残りません。

■まず家計の見直しを

――返済が困難な人はどうすればいいでしょう。

 まず家計の見直しです。携帯電話は通信料が高い場合もあり、加入プランを点検してください。いわゆる格安スマホに変えると料金が月2千~3千円で収まる可能性があります。保険は必要なものに絞り、残りは解約を。がん保険と医療保険に同じような内容の保障があれば一本化していいのでは。

 見直しの際は家計表=写真=の作成がお勧めです。食費や燃料費の無駄を確認でき、月数万円の無駄が見つかる例がざらにあります。弁護士などを通じて入手できます。このように支出を抑えてもなお返済が困難なら、副業で収入増に取り組むことを検討してよいかもしれません。


■毎月の返済額を減らすことも

――家計を見直しても返済が難しい場合は。

 金融機関と相談し、返済期間を延ばして毎月の支払額を減らすリスケジュールを考えます。ただ、期間を延ばすと利息の支払いが増える分、支払総額が膨らむので注意が必要です==。


――借金返済のため消費者金融やカードローンで借金を繰り返す人もいます。

 住宅ローンの返済に困る人は、他にも借金を抱えて首が回らなくなる人が多い印象です。住宅ローンだけは何とか支払おうとして、サラ金で借りてしまう。それでは債務は膨れるばかりで、いずれどこかのタイミングで法的整理が必要になってしまいます。返せないと分かりつつ返済の意思も能力もないのに借りると、金額が1万~2万円でも詐欺罪になりえます。

――法的整理について詳しく教えてください。

 法的整理には個人再生と自己破産があり、いずれも裁判所に申し立てます。個人再生は住宅を手放さずに住宅ローン以外の債務を減額する手続きです。継続的な収入があり住宅ローンや罰金を除く債務総額が5千万円までの人が対象です。一般的な小規模個人再生の場合、返済額は債務総額の5分の1または100万円の、いずれか多い方に減額されます。返済に向けた再生計画案を作り、3~5年間で分割返済していきます。
 
 住宅ローンは減額の対象となりませんが、住宅ローンを支払いながら家を残せるのが大きな長所。ただ、債権者の過半数または債権額の2分の1以上が再生計画案に反対すると利用できません。
 
 自己破産だと債務支払いが免除されますが、手元に残せるのは最大99万円です。金融機関の信用情報(ブラックリスト)に載るのでクレジットカードが作れず、新たな借金はできません。携帯電話の分割払いや機種変更もできず、破産手続き中は警備員や保険外交員など就職できる職業も制限されます。2回目の自己破産は7年間申し立てられず、破産の理由が厳しく審査されます。
 
 条件を満たすなら、法的整理は個人再生の大半を占める小規模個人再生が望ましいでしょう。実際には、再生計画に反対する債権者はほとんどいません。

■ガイドライン、12月からコロナ禍にも適用

――コロナ禍で経済的に苦しんでいる人に関して特別の制度はありますか。

 自然災害でローンを返済できなくなった個人の生活再建を支援する国の指針「債務整理に関するガイドライン」が改定され、12月1日から適用される予定です。

 住宅ローンは、物件の価値よりもローン残額の方が高い場合(いわゆるオーバーローン)に債務減額の対象になり、リスケジュールなどで返済を続けられるなら不動産を手元に残せます。このガイドラインを利用して債務整理をするとブラックリストに載らないという点も大きなメリットです。

 このほか、国や自治体がさまざまなコロナ対策の支援制度を用意しています。国の制度については日本弁護士連合会が資料をまとめています。

――これから住宅ローンを組む人にアドバイスを。

 今後もコロナ禍のような想定外の事態が起きれば、誰でも住宅ローン返済が難しくなる可能性があります。いまの収入でどんな生活が可能か考え、背伸びしない物件選びが大切。毎月の返済額が収入の30%を超すと負担が大きすぎます。マンションだと管理費が高いところがあるので、その点も考慮してください。

 <清水智(しみず・さとし)弁護士>1971年、栃木県の旧氏家町(現さくら市)出身。豊かな自然に憧れて北大農学部に進み、1994年卒業。2000年に弁護士登録し、04年に清水法律事務所を開設して代表弁護士に就いた。北大在学中は体育会空手部の活動に没頭。もとは理系だったが「会社員や研究者は向いてない。自分次第で仕事ができる弁護士はやりがいがある」と法律を猛勉強した。空手2段。趣味は野山を走るトレイルランで「新緑や雪面など四季の移ろいを感じられて爽快」。事務所の総勢7人で登山旅行もする。音楽も好きで、ジミ・ヘンドリックスや電気グルーヴがお気に入り。


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