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<デジタル発>令和ラッコ事情―水族館から (下)活路を探して

 国内で飼育されているラッコが、水族館など4館で6頭にまで減った。その愛らしい姿で、子どもから大人まで癒やしてくれる人気者が、やがて姿を消してしまうのか。3回シリーズの最終回は、長く愛されてきたラッコのカップルと、水族館関係者の間で注目を集める野生のラッコを追い、神戸市立須磨海浜水族園と北海道東部(道東)の浜中町を訪ね、考えた。(文・写真/厚岸支局 山村晋)

国内最高齢カップルのラッキー(右)と明日花=神戸市立須磨海浜水族園提供
国内最高齢カップルのラッキー(右)と明日花=神戸市立須磨海浜水族園提供

■最高齢カップルは神戸に

 神戸市立須磨海浜水族園に、国内の最高齢カップルがいる。22歳の雄「ラッキー」と、21歳の雌「明日花(あすか)」だ。野生のラッコの寿命が15年程度であることを考えると、いずれも、かなりの「おじいちゃん」と「おばあちゃん」ということになる。しかも雄は雌よりも短命で、ラッキーはこれまでの最高齢記録を塗り替え続けている。

 10年来の付き合いという海獣展示課の村本ももよさん(37)は「ラッキーは食欲が落ち、若いころより餌の好き嫌いが激しくなりました」と話す。

 鹿児島県の水族館から「婿入り」したラッキーは、体重29キロ。3年ほど前までは体重の6分の1の餌を食べたが、現在は7分の1にまで落ちた。陸に上がって寝ていることも増え、食欲の落ちない明日花がプールを泳ぎ回っているのとは対照的だ。

神戸市立須磨海浜水族園の村本ももよさん
神戸市立須磨海浜水族園の村本ももよさん

■高齢になると進む「偏食」

 ラッコは、好き嫌いの激しい「選食の動物」だ。子どものころ、母親が教えた餌を好んで食べるためだが、高齢になると「偏食」に磨きのかかる個体もいる。

 須磨海浜水族園の食事タイムは1日4回、午前8時半~午後5時半の間に、アジやサケ、ウチムラサキガイやホッキなどを与える。しかし、食の細るラッキーは規定量を日中に食べきれず、回数を1回増やして午後8時まで飼育員が残業する。

飼育員から餌を受け取るラッキー(左)と明日花=2020年9月16日、須磨海浜水族園
飼育員から餌を受け取るラッキー(左)と明日花=2020年9月16日、須磨海浜水族園


 「ラッキーのリズムに合わせて少しずつ与えるから時間もかかります。魚の切り身にもわがままで、アジは3枚におろして皮も取らないと、食べずに捨てられます。シシャモは冷凍のまま1センチずつぶつ切りにし、溶けたものは食べてくれません。何も食べてくれない時の切り札は、大好物のホタテ。いろいろと根気のいる仕事です」(村本さん)

■北海道東部沿岸のラッコに関する参考文献
 ▼日本の食肉類 生態系の頂点に立つ哺乳類(東京大学出版会、増田隆一編) 「第12章 ラッコ―北方の海生種」(服部薫著)
 ▼ラッコ 霧多布の海に生きる(NPO法人エトピリカ基金、片岡義広著)

 このシリーズは、発信<浜中 令和ラッコ事情 霧多布から>(2020年10月6、8、10日に北海道新聞で3回連載)の番外編として、国内の水族館など飼育施設の「ラッコ事情」をリポートします。

 ■発信<浜中 令和ラッコ事情 霧多布から>
  (上)「観光資源」高まる期待
  (中)雌の増加 繁殖のカギに
  (下)高齢化の漁業 共存期待
 ■<デジタル発>令和ラッコ事情―水族館から
  (上)「絶滅の危機」
  (中)不思議な生態
 ■<デジタル発>霧多布岬に暮らすラッコ 現在、子育て奮闘中 陸から生態観察が人気

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