PR
PR
暮らしと法律

<弁護士に聞く>養育費の不払いは許さない 法改正で取り立てやすく

写真はイメージです  Photo by iStock
写真はイメージです  Photo by iStock

 養育費を回収しやすくする改正民事執行法が今年(2020年)4月、施行されました。離婚後に子供を育てる親が、面倒を見ていない親の銀行口座や勤務先などの情報を取得しやすくし、差し押さえにつなげる狙いです。札幌弁護士会の稲川貴之弁護士に、養育費の支払いを巡る現状や改正のポイントなどを聞きました。(聞き手 佐保田昭宏)


――まずは養育費とは何かをあらためて教えてください。

 四角四面な定義の話からします。養育費とは、離婚した非監護親(子どもと生活していない一方の親)から監護親に対して支払われる未成熟子の養育に関する費用。つまり、子供の面倒を見ていない親から、実際に面倒を見ている親に対して支払われる費用のことです。

■何歳になるまで?

――何歳までを未成熟というのでしょう。

 そこは議論があります。子供が何歳になるまで養育費を払うかということに関係するからです。例えば、「成人になる20歳でしょ」という意見もあれば「いやいや、大学卒業までは働けないんだから大学卒業まで未成熟だ」という意見もあります。ただ、「大学卒業まで」とすると、養育費の終期が22歳までのようにも思えますが、浪人や留年した場合養育費の終期をどうするのかという問題もでてきます。後々紛争にならないように、子供のことも考えた上で、個別の事案に応じて決めることが多いと思います。

――最近、養育費の不払いのトラブルが多いそうですね。

 珍しくないですね。監護親がお願いしても非監護親が払えないケースがありますし、そもそも非監護親に請求しようとしても、連絡が取れなくなるケースもあります。新型コロナウイルス感染拡大の影響で仕事や収入が不安定になり、養育費の不払いに至っているケースも出てきていると思います。

――何か方法はないのですか。

 法的アプローチとしては強制執行があります。ただ、これには悩ましい点があります。強制執行では、相手の給料や預貯金を差し押さえることができますが、相手がどこに勤めているのか、あるいは預貯金がどの銀行のどの支店にあるのか、こちらで調べる必要があります。

■差し押さえが容易に

――養育費の不払い状況を改善するため今年(20年)4月、改正民事執行法が施行されたと聞きました。ポイントはどこでしょう。

 養育費について定めた離婚の調停調書などに基づく差し押さえがこれまでよりもやりやすくなりました。監護親について新たに①金融機関から預貯金の情報を取得する②登記所(法務局)から土地建物に関する情報を取得する(2019年5月17日から2年を超えない範囲内で政令で定める日から運用開始とされており、現時点ではまだ運用開始されていない)③市町村・日本年金機構から給与債権、つまり勤務先の情報を取得する―の三つの方法ができるようになりました。


――非監護親に養育費を支払ってもらうため、第三者を通じて情報を得ることができるようになったということですか。

 そうです。いままでは相手から「絶対に教えません」と言われたら、強制執行に必要な相手方の勤務先や口座の情報を入手することが難しいことも珍しくありませんでしたが、改正法で情報取得の手続きができたので以前よりはこういった情報が入手しやすくなることが期待できます。市町村などから勤務先情報が取得できるので「勤務先がわからないので養育費は諦めるしかない」ということがなくなるのではないでしょうか

■重い支払い義務

――養育費の不払いは減りそうですね。

 ただし、こうした情報取得は、あくまでも養育費について定めた離婚に関する調停調書や離婚訴訟の判決などの債務名義というものがある場合に限ります。差し押さえなどの強制執行も、こういった債務名義に基づいて行うことになります。

――養育費の支払い義務はどの程度重いものなのでしょう。

 養育費の支払い義務は重いものとされています。未成熟のお子さんに対して、親は生活保持義務というものがあります。自分の生活を保持するのと同程度の生活を被扶養者にも保持させるという、とても重い義務です。戦後の家族法の大家である中川善之助(元金沢大学学長)はこの義務について「最後に残された一片の肉までを分け与ふべき義務」と述べています。まずは取り決めをすることが大前提。取り決めを結ぶために、もちろん調停を起こすことも可能です。取り決めができない、あるいは取り決めがあっても払ってくれない場合や支払いについて紛争が生じた場合は、一度弁護士に相談してほしいと思います。

 <稲川貴之(いなかわ・たかゆき)弁護士>1983年、旭川市生まれ。東北大法学部卒。2010年に弁護士登録し、現在清水彰法律事務所に在籍。妻と子の3人家族。最近は自宅の庭での家庭菜園にはまり、今年はミニトマトや枝豆を収穫した。海外のミステリーを読むのも趣味。モットーは「ご依頼者に寄り添う」


PR
ページの先頭へ戻る