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#卒業後の生活設計 #さっぽろ圏12市町村 奨学金返還支え地元定着

 多くの学生にとって生活に欠かせない奨学金。在学中に数百万円を借り、その返済が卒業後の重荷となる。そんな若い人たちが少しでも身軽になって地域に定着してもらおうと、一定の条件の下で「返済のお手伝いを3年間します」という事業が札幌市とその近隣市町村で行われている。いま、利用者募集の真っ最中だ。(青山実)

■認定企業が「決め手」

 「奨学金の返還支援事業の認定企業ということが就職の決め手の一つになりました」。こう話すのは税理士を目指している北海学園大学法学部4年の栗田恵太さん(21)。就活では3社の面接を受け、6月に札幌市の出口秀樹税理士事務所から内定を受けた。大学の単位は全て取れたので現在は研修を兼ねて事務所でデータ処理などのアルバイトをしている。栗田さんが利用を希望しているのは「さっぽろ圏奨学金返還支援事業」で、実施主体は札幌市と近隣11市町村でつくる広域行政協力組織「さっぽろ連携中枢都市圏」。本年度から大学を卒業する人などに対し、奨学金を1年間返済するごとに年間18万円を上限に返済額と同額の支援金を3年間給付する。

  支援を受けるには12市町村内に住み、その圏内に勤務地がある認定企業に就職することなどが条件。認定企業とは支援額の半分を負担できる中小企業。負担分を「中枢都市圏」に寄付してもらい、そこから支援対象者に満額を渡す。事業の目的が「若者の道外流出を防ぐ」(札幌市雇用推進課)ことで、予算の制約もあり、応募は道内外の学生と道外の既卒3年以内の社会人に限定している。募集は本年度の卒業生から3年間続き、大学生なら現4年生が最初で、3年生、2年生も4年生になって認定企業に内定した後で応募できる。人数は毎年100人で、募集時期は10月から12月まで。応募枠を超えた場合は返済総額などを基に選考となるが、初年度の応募者は開始月の10月で13人となっている。

 栗田さんは日本学生支援機構から毎月5万4千円を借り、4年間の総額は約260万円。返済額は月々1万数千円になる見通し。支援事業は事務所の企業説明会で知り「負担を軽くできれば」と内定後に応募を願い出た。出口秀樹所長(53)は認定企業になった理由について「若い人に少しでも安心して働いてもらえれば」と思いを語る。

 認定企業は4月から募集しており10月末で81社。=認定企業の一覧はこちらから=。その一つ、建設業の井上技研(札幌)の犬嶋清幸社長(65)は「この種の支援は単独では難しいが、行政と一緒であれば一定期間はやっていける」とし、「次世代をしっかり育てるためにこの事業を生かしたい」と話す。内定者で利用を希望している室蘭工業大学工学部4年の大橋雅奈美(まなみ)さん(22)は、「会社から認定の話を聞いたとき、利用できれば大変助かるのでぜひにとお願いしました」と言い、「早く現場で頑張りたい」と意欲を示す。

■期間3年「より長く」

 日本学生支援機構によると、同機構の奨学金を借りている大学生は道内で1種(無利子)と2種(有利子)合わせて約3万4千人(2018年度)。実情の一例として学生数約2900人の札幌大学の場合、ほぼ2人に1人が借りている。借りる金額は4年間で1人平均約370万円。返済期間の最長20年で返すと1カ月約1万5千円となり、「就職先にもよるが、毎月の給料から返済していくと重い負担」(学生課)という。

 道内の弁護士らでつくる「北海道学費と奨学金を考える会」代表の西博和弁護士(38)はこの事業について「中小企業にとっては待遇改善の一つになり、働く若者の定着にも一定の役割を果たす」と評価する。その一方で「支援が3年というのは短く、有望な人材を確保しようとする企業の芽をできるだけ伸ばすように行政として長期的な視点も必要」と指摘している。

<取材後記> 札幌は人口の道外流出をせき止める「ダム」の役割を果たしていると言われているが、近隣市町村と共にその役割を一層強めていることがよく分かった。ただ、道内の若者が札幌圏に集まりやすい仕組みになっており、地域バランスから考えると道内全体としての工夫がぜひとも必要と感じた。(青)

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