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<書評>データ農業が日本を救う

窪田新之助著

農の新技術 可能性と課題
評 野口伸(北大大学院教授)

 日本農業における就業者減少と高齢化による労働力不足はよく知られているが、その課題解決に対して情報通信技術(ICT)やロボットを活用した「スマート農業」が期待されている。本書はそのスマート農業に加工・流通・消費を対象としたフードチェーンを加えた「データ農業」について、国内外の動向を網羅的に解説している。

 具体的には全国各地のデータ農業に関する技術開発、ビジネス、そして実利用に向けた取り組みをまとめたものだ。対象は露地農業と施設園芸、作目は水稲、トマト、たまねぎ、キャベツなど多岐にわたり、新技術についても研究開発や実証、実装と幅広いステージを扱っている。当然、スマート農業先進地である道内の取り組みについても述べられている。岩見沢市の5G(次世代高速通信規格)利用や十勝管内鹿追町のキャベツ、タマネギなど収穫作業の省人化について分かりやすく紹介している。

 ほぼすべての記述に取材先を明記しており説得力がある。ただ、取材対象者が技術開発やビジネスの当事者であるがゆえにコメントは有益であるが、その中にバイアスが潜んでいる可能性も承知しておいた方がよいだろう。技術については農業にとって重要なデータを「環境」「作業管理」「生体」に整理して、今後「生体データ」の検出と利用が重要になると論じている点は共感を覚える。また現場実装が始まったロボットについても《1》現状の有効性は大規模農業に限定《2》稲作利用が先行しており、畑作や野菜作に対しては道半ば《3》ロボット作業体系の必要性などを指摘―と、いずれももっともな評論である。また産直Eコマース(電子商取引)の課題にも言及している。

 第3章「農業から食産業へ」が面白い。事例紹介をメインに執筆している点が本書の特徴であるが、欲を言えば日本がデータ農業を推進する上で鍵となる農業データ連係基盤(WAGRI)について、もう少し踏み込んだ解説が欲しかった。いずれにしても本書はデータ農業に関心を持つ人にとって、新技術とともに技術普及の現状と今後の発展を知る上で必読の良書である。(集英社インターナショナル 924円)

<略歴>
くぼた・しんのすけ 1978年生まれ。日本農業新聞の記者を経て、2012年よりフリーの農業ジャーナリスト

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