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コロナと豊作、米価直撃 道内生産者、6年ぶり下落に募る不安

 新米の相対取引価格が6年ぶりに下落し、道産米主力の「ななつぼし」も前年同月に比べ6%安くなった。作柄が良好で予想収穫量が前年を上回っている上に、消費税増税の影響で前年の在庫が積み上がっているからだ。新型コロナウイルス感染拡大も重なり、需要は急減。生産者は下落が続くと経営に響きかねないとして懸念している。

 10月上旬のコープさっぽろのしんことに店(札幌市北区)で、ななつぼし(5キロ)が1825円とほぼ昨年並みで売られていた。コープさっぽろは「20年産の作況はまずまず。今後、店頭価格を引き下げることは考えられる」と話し、家計にはプラスとなりそうだ。

新米が並ぶ札幌市のスーパー=2日、コープさっぽろしんことに店(中村祐子撮影)
新米が並ぶ札幌市のスーパー=2日、コープさっぽろしんことに店(中村祐子撮影)


■収穫量1.2%増

 今年は全国的に作柄が良く、主食用米の予想収穫量(9月15日現在)は前年産比1・2%増の734万6千トン。作況指数は「平年並み」の101と前年収穫期から2ポイント上昇した。道内の作況指数は「やや良」の105と豊作で、作付面積は減ったが前年並みの55万3700トンを見込む。

 道産米は「ゆめぴりか」をはじめ、食味が良く価格も手頃で全国的に小売市場での人気が高い。ホクレンは産地農協への前払い金で、相対取引価格の目安になる概算金(非公表)を前年並みか他産地に比べ引き下げ額を小幅にした。篠原末治会長は9月末の記者会見で「営農意欲の観点を踏まえた。北海道米のブランド価値を生み出すためにもしっかりとした価格をつけた」と説明した。


■下げ幅大きく

 しかし、ななつぼしは全銘柄平均よりも下げ幅が大きく、生産者らの不安は募る。20年産の予想収穫量は農水省が算出した適正生産量709~717万トンを上回っており、19年産の在庫も積み上がっている。道央の米穀卸業の幹部は「ななつぼしは豊作が明らかで、(より市場に敏感な)農協系統外のルートではさらに千円も安い。今年は価格がどこまで下がるか分からない」と警戒する。

 国内の民間在庫は1月の時点で前年同期比14万トン増の295万トンと3年ぶりの高水準。その後、コロナ禍で外食向けの販売量が減り、外国人観光客の減少も響いた。外出自粛で家庭用の需要増が期待されたが、道内中堅の米穀卸業者幹部は「巣ごもりで手軽なパンや麺に消費がシフトし、ホットケーキミックスもよく売れた」と話し、消費が思ったよりコメに向かなかったとの見方だ。


■20万トンを延期

 在庫の積み上がりを反映し、各地のJA全農の県本部は概算金を前年に比べて引き下げた。JA全中は市場に出回る20年産の主食用米のうち、約20万トンの出荷を21年秋以降に延ばす異例の措置で米価安定を図る。中家徹会長は「需給緩和が心配。長期的、計画的に販売する」と対応を急ぐ。

 ただ、翌年への繰り越しは来秋の在庫を膨らませるだけだ。後志管内倶知安町で水田10ヘクタールなどを経営する農家青柳圭太さん(41)は米価下落で1割の減収もあり得るという。今年はコロナ対策の持続化給付金を受けるが「来年も需要が回復しなければ在庫の積み上がりで米価は下がり、経営が厳しくなる」と話す。(生田憲、長谷川裕紀)

■減反廃止 見直し論も 生産抑制進まず

 米価の下落は2018年に国が生産調整(減反)を廃止してから初めて。今後、さらに値崩れが進めば、減反回帰を求める動きが強まる可能性もある。

 国は18年の減反廃止で農家経営の自主性を高めようと、都道府県ごとに主食用米の作付面積の目標を割り振ることをやめた。その代わり、各都道府県の生産者団体が作付面積などの目安を設定し、過剰生産による値崩れを防いでいる。

 目安に強制力はないため生産抑制は十分に進まず、20年産は生産量上位10道県中、7県で目安を超え、ブランド力のある新潟県や秋田県は減反廃止前の17年産と比べて増産した。北海道は「人手が少なくても効率的に生産できる畑作への転換が進んでいる」(農協関係者)といい、実績が目安を超えたことはない。ただ、道産米人気を踏まえ、20年産の目安を全国指標よりも緩やかな1・1%減(18年産比)にとどめた。

 こうした中、自民党内では米価下落への懸念から減反廃止の見直し論が出ている。16日の農林水産省の発表では21年産の生産量を大幅に減らす必要があると見通しが立ち、全国で転作をさらに進めなければいけなくなっている。野上浩太郎農水相は「需要に応じた生産、販売というコメ政策の基本的な考え方を大前提に必要に応じ対策を検討する」と述べた。

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