PR
PR

日ロ電話会談 56年宣言軸では進まぬ

[PR]

 菅義偉首相がロシアのプーチン大統領と電話で初めて会談し、北方領土問題について「次の世代に先送りさせず、終止符を打ちたい」との考えを伝えた。

 首相は就任後、領土問題解決への積極的な言及がなく、外交上の優先度が後退するのではないかとの見方もあった。

 北方四島はロシアに不法占拠されているのが歴史的事実だ。

 主権に関わる問題を首相が率先して解決を図るのは当然である。

 安倍晋三前政権は歯舞群島と色丹島の2島返還を軸にした交渉方針にかじを切った。同時に、経済産業省出身の官邸官僚らが主導して、経済協力を先行させた。

 その結果、交渉はロシアペースとなり、領土協議は2島返還どころか、まったく進んでいない。

 安倍路線の検証は必須であり、問題点を整理した上で交渉の仕切り直しが急がれよう。

 だが今回の会談では、前政権の路線を踏襲し、平和条約締結後の歯舞、色丹の引き渡しを明記した1956年の日ソ共同宣言を交渉の基礎にすることを再確認した。

 決意だけ示して、安倍路線を単に継承するのでは無策に等しい。打開への具体策を示すべきだ。

 日本側の説明では、プーチン氏は「2国間のあらゆる問題について対話を継続していく」と応じたとするが、ロシア側発表では北方領土問題に一切触れていない。

 そうした対応そのものが今のロシア政府の立場を示していよう。

 ロシアでは7月、「領土の割譲禁止」を明記した改正憲法が発効したことで、北方領土返還を巡る協議すら認めない声がサハリン州を中心に高まっている。

 その中でロシア政府が平和条約交渉を続けるのは、安全保障などを巡る米ロ対立を受け、米国と安保協力する日本を揺さぶって対米関係に利用する思惑も透ける。

 56年宣言の有効性を認めながら2島返還を確約しないのは交渉を引き延ばす戦略のようにも映る。

 日本側はその真意を見極めなくてはならない。

 ロシア側は首脳会談に合わせ、国後、択捉両島で軍事訓練を実施し、実効支配をアピールした。

 日本側は外交ルートで抗議したと言うが、首脳会談では持ち出さなかった。言うべきは言う姿勢を欠いていては四島返還は遠のく。

 元島民の平均年齢は85歳を超えた。これ以上の問題先送りは許されないが、決着を急いで安易な妥協をすることも許されない。

 目指すべきは四島返還である。

PR
ページの先頭へ戻る