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検証・アベノミクス 好調を演出し傷口広げた

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 経済政策「アベノミクス」を掲げて再登板した安倍晋三首相は、目指す経済の好循環が一向に実現せず「道半ば」と繰り返してきた。

 長く続く円高とデフレ不況の中で発足して7年8カ月。安倍政権は円安による企業業績の改善や株高などを成果として誇ってきた。

 ただデフレ脱却はおぼつかなく、よりどころとした「成果」も新型コロナ禍で吹き飛んだ。眼前にあるのは格差拡大や将来不安、非正規雇用の増加などの諸課題だ。

 「道半ば」どころか、とうに行き詰まっていたと言っていい。安倍政権は日本経済に何を残したのか、冷静に問い直す必要がある。

■格差の拡大さらに

 アベノミクスの柱は、大胆な金融緩和、機動的な財政出動、民間投資を喚起する成長戦略の「3本の矢」だった。

 だが実態は、第1の矢である金融緩和一辺倒ではなかったか。

 確かに、異次元と称する日銀の大規模緩和は円安をもたらし、輸出型大企業の業績を好転させた。雇用関連の指標が改善し、日経平均株価は2万円台に上がった。

 なのに政権の想定に反し、大企業や株を持つ富裕層から富がしたたり落ちるトリクルダウンは起きず、実質賃金は低迷したままだ。

 恩恵が大企業などに偏った結果、所得や地域の格差は拡大した。

 弊害はそれだけではない。

 日銀は国債の大量購入を通じて資金供給を続けた結果、発行済み国債の半分近くを保有する。

 国の借金を穴埋めするために日銀が紙幣を量産しているかのような状態は異常で危うい。将来、金利が急騰したり日銀の財務が悪化したりするリスクもはらんでおり、早期に正常化を図る必要がある。

 株価を下支えするために日銀が大量に買い入れた上場投資信託(ETF)も同様だ。市場で売る以外の「出口」はないが、株価への悪影響が避けられない。

 第2の矢の財政出動は国の借金を空前の規模に膨らませ、第3の矢の成長戦略も効果が乏しい。

 「女性活躍」「地方創生」「働き方改革」…。耳目を引く看板を次々と掛け替え、いわゆる「やってる感」を演出してきただけだと言われても仕方ない。

 環太平洋連携協定(TPP)など巨大通商協定を成長戦略に位置づけ、農産物の貿易自由化を推し進めたことも忘れてはならない。

 「攻めの農政」をうたいながら、自動車など工業品の輸出増と引き換えに農業に犠牲を強い、食料自給率を高めるための腰を据えた取り組みは置き去りにされた。

■定石外した消費増税

 安倍首相は消費税率を2014年に5%から8%へ、昨年には10%へと引き上げた。

 増税のたびに消費が大きく落ち込み、経済は冷え込んだ。実施を決めたのは民主党政権だが、増税時期やその前後の景気対策が適切だったのか、検証が必要だ。

 政府は先月、政権発足と同時に始まった景気拡大が、2年前に終わっていたと認定した。コロナ禍の影響が顕在化するまで「回復」をアピールし続けたことになる。

 景気後退局面での10%への引き上げは、景気拡大期に実施して悪影響を最小限に抑えるという増税の定石を外していたと言える。

 国民には経済のプラス面ばかりを強調して安心させ、重い負担を強いる増税を強行する―。安倍政権の経済政策は、不誠実なその場しのぎの連続だった。

 背景には、経済面の実績を金看板に据える政権の特質がある。10%への増税を2度先送りし、「国民に信を問う」などと国政選挙の争点に利用した。経済政策のゆがみの要因になった可能性がある。

 増税後も針路は定まらない。

 使途の一部を幼児教育無償化などに変更したものの、少子化に歯止めをかける有効策や、高齢化で費用が膨らみ続ける社会保障の将来像を示すことはなかった。

 困難な課題にしっかりした道筋をつけることこそが、長期政権の使命だったはずだ。

■地に足ついた政策を

 経済の傷口が広がったところにコロナ禍が襲った。後継首相がまず取り組むのは感染収束と、歴史的に落ち込む経済の立て直しだ。

 同時に、少子高齢化と人口減が加速する中でも安心して暮らし続けられる持続可能な社会づくりを進めなければならない。

 非正規が増えて雇用が不安定なままでは安心にはつながらない。

 農業や介護の担い手を増やし、外国人客に過度に依存する観光を見直すなど内需主導で地域経済の足腰を強めることも欠かせまい。

 必要なのは心地よいスローガンではなく、地に足がついた政策だ。

 コロナ収束後は、効果より弊害の方が大きくなった金融緩和の手じまいも検討せねばなるまい。市場を混乱させずに出口へどう導けるのか、難題が重くのしかかる。

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