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ALS嘱託殺人 生きる権利守る社会に

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 難病の女性患者に頼まれ薬物を投与して殺害したとして、嘱託殺人の疑いで仙台と東京の医師2人が警察に逮捕、送検された。

 女性は全身の筋肉が動かなくなっていく筋萎縮性側索硬化症(ALS)で、ツイッターに安楽死を望む書き込みをしていた。

 しかし、回復の見込みがない人の死期を積極的に早める安楽死は日本では認められていない。

 医療現場では過去にも安楽死を巡り医師が殺人罪に問われたことがあるが、いずれも患者の主治医が病室で死期を早めていた。

 その点で今回の事件は異質だ。2人は女性の主治医ではなく、面識もなく、女性から現金130万円を受け取っていたとされる。

 そこには患者の治療に責任を持ち、家族ら周囲の人も交えて患者の生きる道を探り、支える医師本来の姿は見えない。

 容疑者の1人は「高齢者を『枯らす』技術」とのブログで安楽死を肯定する考えを公表していた。

 この事件を、終末期医療を巡る議論を促してきた過去の事件と同列に論じることには疑問がある。まずは、事件の経緯を含む全容を徹底的に解明するべきだろう。

 女性は昨年11月、京都市の自宅マンションに両容疑者を招き入れ、2人が去った後に容体が急変し急性薬物中毒で亡くなった。

 両容疑者は偽名を使い女性の知人を装って訪れ、女性宅に滞在したのは10分程度という。

 積極的安楽死を巡っては、1991年の東海大安楽死事件で横浜地裁が要件を満たせば違法性が阻却されるとの判断を示している。

 要件は《1》耐え難い肉体的苦痛《2》死期が迫っている《3》苦痛緩和の方法を尽くし、他に手段がない《4》本人の意思表示―である。

 ただ意思は変わりうるため、厚生労働省の終末期医療のガイドラインは家族らを含め何度も話し合って確認することを求めている。

 女性と両容疑者が会った短時間に何があったのか。捜査当局はその日に至るまでのやりとりも含め、調べを尽くしてほしい。

 女性はインターネットを介して苦悩を発信し続けたが、女性が頼るのはネットしかなかったのか。

 事件後、ALS患者であるれいわ新選組の舩後靖彦参院議員は「『死ぬ権利』より『生きる権利』を守る社会にしていくことが何よりも大切」とコメントした。

 重い言葉だ。難病患者らが「生きたい」と思える、支え合いの社会をどうつくるか。私たちは真剣に考えねばならない。

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