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強制不妊判決 実態直視し救済の道を

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 旧優生保護法下で不妊手術を強制されたとして、東京都の男性が国に損害賠償を求めた訴訟の判決で、東京地裁は請求を棄却した。

 「不良な子孫の出生防止」という誤った思想にとらわれた、国による重大な人権侵害である。被害者に対し、冷淡な判決と言わざるを得ない。

 さらに問題なのは、旧法が違憲かどうかの判断を避けたことだ。

 同種訴訟の仙台地裁判決は昨年5月、障害者らに不妊手術を強制した旧法は、幸福追求権を保障する憲法13条に違反すると明確に指摘した。

 東京地裁判決はここから大きく後退し、手術の違法性を指摘するにとどまった。

 子どもを産み育てる権利を奪われた人々は言葉に尽くせない苦労を強いられてきた。その実態に目を向け、被害者救済の道を開かなくてはならない。

 判決が請求棄却としたのは、賠償請求権は不法行為から20年で消滅するとした民法の「除斥期間」の規定を厳格に適用したためだ。

 男性が遅くとも旧法が母体保護法へと改められた1996年以降は提訴できる状況にあったのにそうせず、請求権は消滅したと結論付けた。

 しかし、手術の内容を知らない被害者は多く、差別を恐れて近年まで提訴に踏み切れなかった実態がある。

 裁判で原告側は、子を産めない状態は続いており被害は終わっていないとして、除斥期間は適用するべきではないと主張した。被害の深刻さを思えば、考慮に値するのではないか。

 仙台地裁判決は、子を持つか持たないかを自ら決定する「リプロダクティブ権」を個人の基本的権利だと認め、これを侵害する旧法を違憲だと断じた。

 東京地裁判決がその権利に踏み込むのを避けたのは疑問だ。人権擁護に消極的すぎないか。

 昨春、被害者に一時金を支給する救済法が施行された。しかし内容には課題が多い。

 一時金の金額は320万円と、札幌を含む各地の裁判所で争われている訴訟の賠償請求額を大きく下回る。

 これまでに支給が認められたのは600人余で、亡くなった人を含め全国で約2万5千人とされる被害者のごくわずかだ。本人からの請求を基本としているためだ。

 国は、国策に抑圧された被害者を放置せず、責任を持って救済の手だてを尽くさねばならない。

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