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香港「安全法」 一国二制度が崩壊する

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 香港の民意を無視し、自治を奪う横暴としか言いようがない。

 中国の国会に当たる全国人民代表大会(全人代)常務委員会は、中国政府による香港の統制強化を目的とした香港国家安全維持法案を、返還23年の前日となるきのう可決した。

 治安維持を担う中国政府の出先機関を新設し、香港で続く抗議デモなどに対して中国当局が直接、取り締まることが可能になる。

 香港の既存の法律より、維持法が優先されるとも規定する。

 香港に高度の自治や独自の司法制度を認めた「一国二制度」は、返還時に中国が50年変えないとした公約だ。それが完全に形骸化しかねない。言論や集会の自由も失われかねず、人権の危機だ。

 国際社会に対する重大な背信行為であり、撤回すべきである。

 習近平指導部は香港立法会(議会)を経ず頭越しに制定する異例の手続きを取り、審議も従来になく短期間で行った。

 新型コロナウイルスの感染拡大で経済が悪化する中、力ずくで統治を強化する姿勢を示し、引き締めを図ることを狙ったのだろう。

 維持法は選挙の候補者について、香港基本法の順守や香港政府への忠誠を誓う確認書に署名しなければならないとする。

 9月には立法会選挙があり、民主派の躍進が予想される。その前に施行して、民主派を門前払いする意図が透ける。民意を封じ込める強権政治は言語道断だ。

 司法への影響も懸念される。国家の安全に関わる犯罪を審理する裁判官は、香港政府トップの行政長官が指名する。中国寄りの判決しか出なくなる恐れがある。

 司法の透明性が失われて外資系企業が敬遠し、国際金融センターの機能も損なわれかねない。

 世論調査で市民の6割超が法制化に反対しているのは当然だ。

 日本をはじめ国際社会は中国への批判を強めるべきである。

 トランプ米政権は香港への優遇措置を見直す方針だ。中国共産党当局者らのビザ(査証)発給を制限し、軍民両用の技術に関する輸出を中国本土並みに規制する。

 中国は香港の民主派を米国が支援していると警戒しており、「内政干渉」と猛反発している。米中対立は一段と先鋭化しかねない。

 だが、中国の国際公約違反は明らかだ。一国二制度を維持すると言う以上、それを担保する姿勢を見せなければ信用を失うだけである。これでは大国を名乗る資格などあろうはずがない。

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