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ネット中傷「許せない」 道内で弁護士に相談相次ぐ 専門家「SNS教育必要」

 会員制交流サイト(SNS)で誹謗(ひぼう)中傷を受けたプロレスラーの木村花さんが5月に死去するなど、SNSを巡るトラブルが深刻化する中で、法的措置を含めて弁護士に相談するケースが道内で相次いでいる。訴訟費用などの負担は伴うが、被害者は「泣き寝入りでは中傷が収まらない」と強調。専門家は「被害者保護の強化とともに、SNSのモラル教育に力を入れる必要がある」と指摘する。

 「中傷が1年以上も続き、SNS上で拡散された。木村花さんの問題は人ごとではない」。6月上旬、被害相談のため、弁護士事務所を訪れた札幌の会社員の20代男性はそう語る。昨夏、見知らぬ人から「詐欺に関わっている」などと虚偽の情報を書き込まれるようになった。男性は「仕事に影響が出かねず、時間がかかっても相手を特定したい」と決意する。

 男性が相談した札幌の弁護士事務所には、同様の相談が5月以降、従来より約4割増加。同事務所の高森健弁護士は「木村花さんの問題が表面化後、訴訟を起こしたいという相談が増えている」と話す。

 ネット上で中傷や非難が殺到する「炎上」は著名人だけの問題ではない。道央の30代女性は、匿名で動画サイトを立ち上げた直後、ツイッター上で本名を特定され「未成年と交際している」などと大量の中傷を投稿された。昨年提訴して数人を特定したが、誰とも接点はなかった。

 高森弁護士がこれまで特定した投稿者の多くは40~60代の会社員で、安定した収入を得ている人も目立つという。同弁護士は「自分は特定されないと軽い気持ちで投稿する事例がほとんど。特定後に損害賠償請求に応じなければ、給料や自宅の差し押さえもあり、代償は大きい」と指摘する。

 ただ、発信者を特定するための情報開示請求の訴訟費用は数十万円、期間も数カ月かかる。負担軽減策として、政府が検討を進める裁判手続きの簡素化について、高森弁護士は「表現の自由に配慮した上で制度改正は必要だが、それだけでは限界がある。学校などでSNS教育を充実させる必要がある」と指摘する。

 道内の小中高校もSNSに関する授業を実施しているが、帯広市内の40代教諭は「SNSを使いこなせず『相手が嫌がる内容を投稿するな』といった形式的な指導しかできない教員も少なくない」と明かす。

 道央の中3の女子生徒は昨秋、学校祭の運営を巡り、同級生からツイッターに悪口を投稿されるようになった。顔写真をさらされ、見知らぬ人物から「気持ち悪い」と書き込まれたこともあり、半年以上たった今も不登校が続く。「心配した友達が先生に話をしてくれたけど、何もしてくれなかった」と実情を訴える。

 国際大グローバル・コミュニケーション・センターの山口真一准教授は「炎上事例を分析すると、根拠不明の情報を信じ、許せないと思い込んで投稿した人が約7割いた。偏った情報を読み解く教育が必要。子どもだけでなく、大人も会社の研修などで理解を深めるべきだ」としている。(山岡正和、水野富仁)

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