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<書評>オレたちは「ガイジン部隊」なんかじゃない!

菊地高弘著

「野球留学生」の実態探る
評 カルロス矢吹(ライター)


 タイトルの「ガイジン部隊」という言葉にまず説明が必要でしょう。高校野球の世界では、越境入学して野球部に入ってくる生徒を「野球留学生」と呼ぶことがあります。「ガイジン部隊」とはそれを揶揄(やゆ)した言葉です。これは日本で絶大な人気を誇りつつ、地元と濃厚に密接している高校野球独自の言葉遣いでしょう。6カ国15人の海外出身選手が「日本代表」としてW杯を戦ったラグビーと比べると、かなり時代遅れの物言いにさえ映ります。もちろん、「お金のある私立が、金にものを言わせて全国から選手をかき集めている」。そんなイメージが先行しているせいかもしれません。

 では、実際はどうなのでしょうか? この本では、高校野球を長年取材し続けている著者が全国8カ所の強豪校を回って「野球留学生」である高校生本人から丁寧に話を聞き、彼らの生の声を積み重ねています。そこでわかることは、彼らのほぼ全員が自分の意思で学校を選んでいるという当たり前の事実です。しかも「野球がうまくなりたい」「甲子園に出たい」という競技面の理由だけでなく、「寮生活を送って早く自立したい」という人としての成長も目指して進学している生徒も多い。彼らは中学3年生の時に見学で学校の施設や教育方針に直接触れ、自分の頭で考えて進学先を選んでいます。それを頭ごなしに否定するのはやぼではないでしょうか。

 本書は親元を離れて厳しい環境に身を置く高校生たちと、彼らを受け入れる学校、そして地域へのエールになっています。人間は一人の力で成長することなんてできない。駒大苫小牧高の夏の甲子園2連覇に大きく貢献した田中将大投手(現ヤンキース)も、「多くの学校から声をかけられたけれども、全国の学校から施設や環境などを見て、将来プロ野球選手になるということを前提として考えた」という理由で、兵庫県から同校への進学を選択しています。北海道出身の人にとって、地元の選手は誇らしい。だけど、北海道を選んで来てくれた選手も、同じくらい地元の誇りに思っていいと思うのです。(インプレス 1650円)

<略歴>
きくち・たかひろ 1982年生まれ。野球専門誌「野球小僧」「野球太郎」の編集者を経てライターに

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