PR
PR

【回答者 高森健弁護士】うその約束、真意知らなければ有効

質問 20代会社員です。数量限定販売の腕時計を買おうとしていたところ、ある日、会社の先輩が譲ってくれると言ってくれました。ところが、しばらくたってもくれる様子がなく、聞いてみると、「エープリルフールのうそだ」と言われてしまい、その間に腕時計は売り切れてしまいました。確かに4月1日の出来事だったのですが、腕時計を渡してもらうことはできますか。

回答 「腕時計をあげる」という約束は、法律的には贈与契約という契約に当たります。ご相談のケースのように、先輩が守る気のない約束をした場合であっても、あなたがそのことを知らなかったのであれば、契約としては有効に成立しますので(心裡(しんり)留保といいます)、あなたは先輩に腕時計の引き渡しを求めることができそうです。

 ただ、先輩が守る気のない約束をしていることを知ることができた場合には、契約は無効となります。「知ることができた場合」とは、通常の注意力を働かせれば相手の真意に気づくことができた場合を意味します。例えば、先輩が飲み会の席でふざけ半分に口にした場合がこれに当たるでしょう。

 それでは、エープリルフールの日の話であることは、「知ることができた場合」に当たるでしょうか。

 結論としては、これだけでは「知ることができた場合」には当たらないでしょう。もしこれが当たるとすれば、4月1日に何らかの契約をする人はいなくなってしまい、経済や社会が大混乱に陥ってしまうからです。したがって、あなたと先輩との贈与契約は有効に成立したことになります。

 ところが、ことはそう簡単ではありません。贈与契約が有効に成立していても、書面によらない贈与、つまり口約束だけでは、いつでも解除できると法律が認めているからです。そのため、先輩の口約束だけなのであれば、先輩はいつでも贈与契約を解除することができることになり、残念ながらあなたは腕時計を手に入れられないことになってしまいます。

 今回は贈与なのでこのような結論となりますが、例えば先輩が「格安で腕時計を譲る」と言っていたのであれば、たとえ口約束でも売買契約が有効に成立し、解除することはできません。安易なうそは法律上の不利益を与えたり、信頼関係を破壊することになりますので、十分に注意しましょう。(たかもり・つよし)

北海道新聞 購読の申し込みはこちらから
新聞配達スタッフ募集
PR
ページの先頭へ戻る