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暮らしと法律

相続人がいっぱい! 気が遠くなる「多人数相続」を避けるコツと解決策

写真はイメージです
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 決着が付くまで、膨大な時間がかかることもある遺産相続。中でも、相続財産を受け継ぐ「相続人」が多数に上るケースは、話し合いがスムーズに進まず、議論が平行線をたどるなど、解決のハードルが高くなりがちです。遺産分割協議が続く中で相続人が亡くなり、相続人が新たに増えるというような事態も実際に起きています。多人数が係わる相続の現状や解決策などについて、札幌弁護士会の折田純一弁護士に聞きました。
(聞き手 梶山征広)

――遺産相続で相続人が複数に上るケースは多いと思います。現状はどうなっていますか。

 相続の全体像が分かる統計は、私が調べた限りでは、残念ながら見当たりませんでした。ただ、国税庁が毎年まとめている相続税のデータから、一定程度の傾向がつかめるかと思います。

 国税庁統計年報平成29(2017)年度版によると、この年に相続が発生し、申告があった「被相続人」(亡くなった人)の人数は14万3881人に上り、このうち12万6780人が、2人以上の相続人がいるケースでした。全体に占める割合は88・1%になります。

 複数の相続人の統計をさらに細かく見ていくと、相続人2~4人が全体の80%以上を占めています。一方で、相続人が5人以上のケースも全体の7・1%を占めており、被相続人555人の相続で、相続人が10人以上関わっていました。


――相続人が何人以上になれば、「多人数相続」と呼ばれるのでしょうか。

 民法の条文上に「多人数相続」という言葉はありませんので、明確な規定はありません。このため、相続人が何人以上になれば「多人数相続」になるという基準はありませんが、確かなのは、相続人の人数が多くなればなるほど、手続きや協議に困難が伴い、解決するまでに相当な時間がかかる可能性が大きくなるということです。

■「数次相続」「代襲相続」

――相続人が多い遺産相続の具体例を教えてください。

 土地・建物の所有者が亡くなったにもかかわらず、長期間にわたって遺産相続が行われてこなかったという場合に問題が顕在化することが多いと思います。こうした事態は、土地や建物の売買に絡んで発覚するケースが多いように思います。

 土地所有者の死亡時から時間が経過していれば経過しているほど、相続人自身が亡くなっている可能性も大きくなります。亡くなった相続人に配偶者や子供がいた場合は新たな相続が発生し、元々の相続に対して相続人がさらに増えることになります。これを「数次相続」と呼んでいます。


 この数次相続と類似した形態として「代襲相続」があります。これは、亡くなった方(被相続人)が死亡する前に、相続人になるはずだった者が死亡し、その人に子供がいるケースです。祖父と父、子の関係で当てはめると、祖父が亡くなる前に父が死亡しており、その後、祖父が亡くなったため、子(祖父から見ると孫)が祖父の遺産を相続するような場合です。


 こうしたことが重なった結果、相続人が数十人になるというケースが実際に起こっています。

■戸籍収集だけでも相当な費用

――相続人が多数に上り、相続が手つかずだった場合、どのような作業が必要なのでしょうか。

 これまで何の手続きも取られてこなかった土地・建物を売却するケースについて考えてみましょう。

 こうした土地・建物の売買を成立させるためには、亡くなった人に代わる土地所有者を明確にしなければなりませんが、そのためにはまず、亡くなった土地・建物の所有者(被相続人)が生まれてから亡くなるまでの戸籍を集めて、相続人を特定する必要があります。被相続人の兄弟姉妹が相続人となる場合には、亡くなった土地所有者の両親が生まれてから亡くなるまでの戸籍も集めなければなりません。

 相続人が生きているのか、亡くなっているのか。生存している場合は、どこに住んでいるのか。そして、どんな人たちなのかを一つ一つ、丹念に明らかにしていく必要があります。

 ただ、土地所有者が亡くなってから時間が経過している場合、数次相続が発生し、相続人の状況がまったく分からないというケースがしばしば起こり得ます。こうした場合、先祖やその子孫らの戸籍を辿っていくなどして、相続人を特定していく訳ですが、人数によっては、戸籍を収集するだけでもかなりの費用が必要になります。これが「第一段階」と言えるか思います。

――最初の段階だけでも、相当な時間と手間がかかりそうですが、次の段階で必要な作業は?

 特定した相続人の間で遺産分割協議を行い、相続人全員の了解を得ていく必要があります。相続分の放棄や譲渡などによって、土地・建物の所有者を一本化するのか。土地や建物の所有者を相続人の1人としたうえで、土地・建物を相続した相続人が他の相続人に対して代償金を支払うのか、土地・建物の売却金を持ち分に従って分配していくのか。具体的な取り扱いを決めなければなりません。

 こうした一連の作業が、相続人の人数が多くなるほど難しくなっていくのは、容易に想像が付くかと思います。

 私が携わったケースでも、多数の相続人の中で1人が、協議に非協力的だったため、土地の相続登記手続きが進まないと、相続人の1人が相談に来られた案件がありました。この時は、協議に非協力的だった相続人に対して、弁護士名で手紙を送付し、手続きに協力してもらいたい理由を説明するなどして、なんとか了解を得ることができ、相続登記手続を進めることができました。

■時間が経つほど難易度は上がる

――気が遠くなるような話ですね。

 そうですね。さらに言えば、数次相続が生じているような場合は、相続人が高齢というケースが多く、その人に判断能力があるのか、その人が関与した遺産分割協議は有効なのかどうかという問題が出てくることもあります。相続人の判断能力に疑義がある場合は、成年後見制度の申し立てを行うなど、新たな手続きが必要になります。

――煩雑な作業を避けるためには、具体的にどうしたらいいのでしょうか?

 そもそもの話になりますが、相続が発生したら速やかにその時点で、相続人同士の協議を行い、遺産の分割を終えておくことが何よりも肝要だと思います。最初にきっちりと対応しておけば、将来にわたって「多人数相続」や「数次相続」などが発生する可能性は小さくなります。

 ただ、現時点で既に、相続の諸手続きが放置されている状況も当然あるかと思います。その場合についてもご自身の配偶者、子どもや孫、さらにその先の世代のために、必要な手続きを迅速に進めるようにしてください。これまで示してきた通り、時間が経過すればするほど、問題解決の難易度が上がっていくのは間違いないからです。

 とは言っても、当事者間で事態を解決できなかったり、解決の方法が分からなかったりする場合もあるでしょう。そういった時には、専門家である弁護士に相談するのが、解決の早道になるかと思います。

 各地に弁護士会や法律相談センターがあるほか、自治体などが主催する無料の法律相談も開かれています。そういった機会を見つけて、相談してみるのも、一つの手段になりうるでしょう。

 <折田純一(おりた・じゅんいち)弁護士> 1991年、伊達市生まれ。一橋大法学部、早稲田大ロースクールを経て、2015年に司法試験に合格。16年に札幌弁護士会に弁護士登録した。田中・渡辺法律事務所所属。趣味は将棋。元竜王の藤井猛九段のファンで、タイトル戦は指し手をスマートフォンなどで欠かさずチェックしている。休みの日は札幌市内の自宅で、卵焼きや肉じゃが、なすの揚げびたしなどを調理。大好きな高知の地酒「酔鯨」をたしなんでいるという。

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