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きょう憲法記念日 危機に乗じた改定は論外

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 日本国憲法が施行されて、きょうで73年となる。

 新型コロナウイルスの感染拡大で、国民の生命、暮らしがかつて経験したことがないような危機に直面している中での記念日だ。

 特別措置法に基づく緊急事態宣言は全都道府県に広がり、6日の期限は延長の方向だ。人との接触を減らすための外出自粛や店舗休業などの要請は続くだろう。

 新型コロナと向き合う医療従事者は過酷な環境にある。経済の停滞で仕事を失ったり、収入がなくなったりする人が続出している。さまざまな制限によって厳しい生活に直面する多くの人がいる。

 憲法の3原則の一つである基本的人権が大きく揺らいでいる。

 政治がいま、取り組むべきは憲法の理念の徹底だろう。

 にもかかわらず、安倍晋三首相は改憲に前のめりの姿勢を崩していない。国民の苦境を考えれば、憲法の見直しへ動くことなどあってはならない。

■緊急事態条項が浮上

 首相は先月、「緊急時に国家や国民がどのような役割を果たし、国難を乗り越えるか。憲法にどう位置付けるかは極めて重く大切な課題だ」と述べた。

 これは自民党が2018年にまとめた改憲4項目の一つである緊急事態条項の導入について、国会での議論を促したものだ。条項は大災害時に政府に非常の措置を取ることができる権限を与える。

 法律と同じ効力を持つ政令を制定することができ、国民の生命や身体、財産を保護するために、あらゆる分野に強権を発動することが可能となる。

 国民の私権を大幅に制限できる措置が恒常化される仕組みを非常時の中で整えたい思惑が透ける。

 首相は改定憲法施行の目標を今年に置いていた。主眼としたのは改憲4項目にある9条への自衛隊明記だ。東京五輪で醸成された国威発揚の機運を利用して進めたいとの考えがあったと言われる。

 しかし東京五輪の延期など、首相の想定は実現が困難な状況だ。

 そこで9条に代わって浮上したのが緊急事態条項なのか。それはコロナ禍での国民の不安を都合よく利用することにほかならない。

 さらに自民党は先月中旬、憲法改正推進本部の会合を開き、緊急事態への対応を議論した。感染拡大による国会への影響が考えられるからだという。

 論点は、国会議員が感染し、憲法が定めた衆参両院の本会議開会の定足数を満たせなくなる可能性と、事態の長期化で来年10月の衆院の任期満了までに選挙が実施できなくなる恐れ、の2点だ。

 これらをもって憲法審査会を開催するよう野党に提案した。

 だが野党は新型コロナ対策を優先すべきだとして応じていない。当然の対応だろう。

 現憲法には衆院解散後に必要が生じた際には、参院の緊急集会を開催することができると54条にある。非常事態への対応は可能ではないか。不急の体制ならば、混乱時に性急な議論は避けるべきだ。

■独裁生む危うさ潜む

 海外に目を向けると、強権が発動されたケースは多い。中国・武漢の封鎖をはじめ、欧米でも罰則を伴った外出禁止や店舗の休業要請が行われている。強制的な措置で効果が出ている例もある。

 だからだろう。政府の権限を強化し、私権制限を拡大してでも対策を徹底した方がいいとの考えは広がりを見せる。

 実際、緊急事態宣言が北海道を含む全国に発令されたことについて、北海道新聞社が先月中旬に実施した全道世論調査では「評価する」と答えた人が76%を占めた。

 ドイツの法学者カール・シュミットが言う「委任独裁」が思い出される。戦争など非常時に主権者の全権委任によって一時的、例外的に行われる独裁である。

 非常時にはこうした事態が生じてしまう危うさが潜んでいることを認識しておかねばならない。

■権力監視を怠りなく

 日本の特措法に基づく緊急事態宣言は非常時の一時的な措置であり、出口の時期が示される。危機対応は常に平時には終了させることが想定されていないと危険だ。

 だが自民党が改憲で目指す緊急事態条項は、一度出した政令の解除手続きに触れていないとの指摘がある。強権が継続していく可能性を示している。

 コロナ禍が長期化してもこの条項実現につなげるべきではない。

 権力者は政策について、情報開示と説明を尽くして、主権者である国民の理解を得ていく。それが国民主権の根本である。

 そんなことはお構いなしに権力が暴走すれば、民主主義は崩れる。憲法が政権を縛る立憲主義が欠かせないゆえんだ。だから国民は監視を怠ってはならない。この非常時に改めて認識したい。

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