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第八章 新しい友達

「行っても、どうせ知れてるもん、わたしが買える服なんて。レンタルしようかな。」
「借りるんですか?」
「どうせ、奮発して良い服買っても、それっきり着ていく場所もないし。」
「僕が買いましょうか?」

 僕は、イフィーから支払われている高額の報酬のことを考えながら言った。三好は、
「おー、羽振りのいい人は、言うことが違うねぇー。」

 と笑ったが、首を振って、
「大丈夫。自分で借りるから。」

 と言った。
「僕が誘ったパーティーなので。」
「大丈夫。――あんまり色々してもらうと、“シェア”のバランスが崩れるから。」

 三好は、僕を傷つけたくない、という風の表情でそう言ったが、本心からなのか、一種の気づかいなのかはわからなかった。

 僕は、その返答に気まずさを感じた。ただ、彼女に喜んでもらいたいだけであって、それ以上の意味はないということを伝えたかった。しかし、そんな打算のない思いに対して、人が何と名づけるのかは明らかだっだ。僕はただ、「わかりました。」と頷(うなず)いて、彼女の考えを受け容(い)れるより外はなかった。

 

 

 この間、〈母〉との関係には、大きな変化があった。

 三好と“シェア”を始めた当初、一旦(いったん)、僕は〈母〉と会話をする機会が減った。

 それは、リヴィングにある仮想現実のシステムを気兼ねなく使える機会が減ったからだった。

 その後、〈母〉がなかなか愁眉を開いてくれない時期が続いたが、それも、僕の目の動きのせいだという野崎の助言を得て、今は改善されている。

 それでも、僕が〈母〉と会うために、ヘッドセットに手を伸ばす機会は、以前ほど多くはなかった。

 イフィーとの新しい生活が始まり、しばらくは、そのことで頭がいっぱいだった。とは言え、以前ならば、それもいの一番に〈母〉に報告したのではなかったか?

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