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市立札幌病院・向井正也院長「手順踏まず来院、患者治療に支障も」「医療従事者へ根拠のない差別残念」 一問一答

 1月末以降、新型コロナウイルスの感染者の入院を受け入れてきた市立札幌病院の向井正也院長(64)に、現状の医療体制や課題を聞いた。(聞き手・五十嵐俊介)

 ――新型ウイルス感染者の受け入れの現状は。

 「感染症専用病棟は8床。さらに救命救急センター内のICU(集中治療室)8床のうち2床で人工呼吸器などが必要な重症患者を受け入れており、感染者用は計10床です。汚染地域と非汚染地域を分けるため、ICUの残り6床は使えない状態です」

 ――入院患者はどのように過ごすのですか。

 「1人1部屋か2人1部屋で、(ウイルスが外に漏れないよう気圧を低くした)陰圧室で過ごします。ICUの2室も陰圧に切り替えました。病室にはトイレや洗面台、テレビはあり、スマートフォンの持ち込みも基本的に問題ありません。ただ、家族らとの面会はテレビ電話。病室からは出られません」

 ――どんな治療を受けるのでしょうか。

 「基本的には熱を下げる薬とたんを出しやすくする薬。根本的にこのウイルスにきく薬はまだないので、重症、中等症の患者にはもれなくインフルエンザ薬やぜんそく薬など医学的に正しいと考えられる薬を使っています。軽症患者は点滴など水分補給くらいです。発熱やせきなどの症状がなくなっても、ウイルスはなかなか体内から消えず、すぐに退院できるわけではありません。元気なのに部屋から出られず、そのストレスは大きいでしょう。症状がなくなってからしばらくして12時間空けた2度の検査で陰性なら退院できます」

 ――医師や看護師の感染防止策は。

 「基本的には顔面シールドと(医療用の)サージカルマスク、エプロンを付けて患者に応対します。人工呼吸器の装着が長期化して気管を切開する時やたん吸引の時は飛沫(ひ まつ)を浴びる危険が高いので、(より細かい微粒子を防ぐ)N95マスクを使い、全身防護服を着ることもあります。対応後は手洗いやうがい、アルコール消毒を徹底し、場合によってはシャワーを浴びてもらいます。マスクなどの着脱訓練も行い、着脱の際は別の人にチェックしてもらっています。着脱は、感染者がいる汚染地域(感染病棟)と非汚染地域(一般病棟)の間に設けた中間地域で行い、一般病棟には絶対にウイルスを持ち込ませません」

 ――医師や看護師は足りていますか。

 「感染症病棟がこれまで使われたのは2009年の新型インフルエンザの流行時に数例程度。感染症担当医は3人いますが、直前まで看護師は配置されていなかったので、精神科などから感染症病棟に看護師二十数人を集めてきました」

 ――これまで受け入れた感染者数は。

 「(11日時点で)17人です。このうち治療が終わって退院したり一般病棟に移った人が6人。陽性のままでしたが、ベッドがいっぱいになったので他の病院に引き受けてもらった人が2人。残り9人がいまも入院中です」

 ――保健所や一般病院との連携はうまくいっていますか。

 「17人のほか、感染しているか判明していないのに一般病院から送られてきた患者も2、3人います。『不安だ。うちではみられない』と言ったり、保健所を通じて当院に受け入れるよう強く言ってきたりした病院があります。うちの感染症担当医にとっては相当な負担になります」

 ――外来にも感染を心配する患者がたくさん来ているのでは。

 「一般病院からの紹介で、熱があるというだけで、インフルエンザの検査もされないまま当院に来る人が多い日は1日十数人います。本来はインフルエンザなどが否定され、患者本人がそれでも心配なら保健所に新型ウイルスの検査が必要か相談する手順です。当院は入院の治療に力を入れていますが、これ以上外来患者が増えれば支障がでかねません。外来の中に感染した人がいると院内感染につながる恐れもあります。症状が軽い人は自宅で安静にするのが望ましいです」

 ――肺炎などの所見に特徴はあるのですか。

 「肺炎の形が独特です。一般の肺炎ならエックス線検査ではっきり陰影が出るのですが、新型ウイルスの肺炎はエックス線では見えにくく、特に初期は陰が薄く、ほとんど分かりません。CT(コンピューター断層撮影装置)でないとなかなか分からないので、当院ではインフルエンザで陰性ならエックス線を飛ばしてCTを撮っています。一般病院では分かりにくいので、医師も不安になり、当院のような指定病院に患者を送りたくなるのでしょう」

 ――症状は。

 「症状はせきとたんのほか、だるさや筋肉痛が顕著で、患者の多くが『今までに経験したことがない』と言います。これらの症状はインフルエンザも同様なので、ウイルス性の急性疾患の特徴とも言えます」

 ――感染の有無を調べるPCR検査が公的保険の適用対象になりました。

 「一般の人が受ける必要はなく、症状が強く疑われる人が受けるべきだと思います。有効な治療があるわけではないので、無症状の人はかえって不安が募るだけではないでしょうか。陽性者がたくさん出れば保健所もどうさばくか課題となり、病院も大変になります。感染者を受け入れている病院はどこも病床がいっぱいになっており、行政には受け入れ病院を増やすようお願いしたいです」

 ――感染を恐れるあまり医療従事者を差別的に扱う人もいると聞きます。

 「当院にも、保育園に子どもを預けようとしたら『市立病院の子どもはだめ』と言われた職員がいます。別の病院では『市立病院の職員の30%は感染しているから、うちでは診療しない』という医師までいたと聞きます。院内感染対策に万全を期すよう頑張っているのに全く根拠のない話をされるのは残念です」


<略歴>むかい・まさや 札幌出身。札幌北高、北大医学部卒。市立札幌病院で副院長などを経て、2019年4月から現職。総合内科、リウマチ、血液、アレルギーの専門医。

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