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日鉄合理化 地方への影響最小限に

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 鉄鋼業界が苦境に追い込まれている。

 国内最大手の日本製鉄が2023年9月末までに、子会社である日鉄日新製鋼の呉製鉄所(広島県)を閉鎖するなど生産体制を大幅削減する。高炉を持つ製鉄所の閉鎖は初めてという。

 世界的な競争激化に加え、米中貿易摩擦の余波による鋼材需要の減少が追い打ちをかけた。

 呉製鉄所の雇用は協力会社を含めると約3千人に上る。周囲には金属加工など下請けの中小企業が集積する。

 長く地元に根差した基幹産業が全面撤退する影響は計り知れない。呉市や広島県が反発を強め、再考を求めるのも無理はない。

 雇用の確保はもちろん、仕事を失う下請け企業を後押しし、地域への打撃を最小限にすべきだ。

 呉製鉄所は旧日本軍の呉海軍工廠(こうしょう)の跡地に立つ。戦後は、日鉄日新製鋼の前身の会社が1951年から操業している。

 日鉄は希望退職は募集せず、配置転換などで職場を用意するという。協力会社の社員を含めて雇用の確保に全力を挙げてほしい。

 生産体制の縮小は呉にとどまらない。和歌山製鉄所の高炉1基も22年9月をめどに休止する。

 新たな休止と休止の前倒しは計9拠点に及び、粗鋼生産能力を1割、年約500万トン減らす。

 室蘭製鉄所は合理化の対象から外れ、19年ぶりに高炉を改修する。日鉄で初めての人工知能(AI)を導入した最新鋭の高炉を整備し、自動車向け特殊鋼の中核生産施設として機能を強化する。

 合理化には競争力で優位な設備に生産を集約する狙いがある。

 しかし米中貿易摩擦の行方は見通せない。中国経済の成長が鈍れば、余った中国製鋼材が海外市場に流れ出す恐れがある。

 新型肺炎の感染拡大により、その懸念は一段と強まっている。

 日鉄は経営環境の悪化が続けばさらなる合理化もありうると示唆する。他の鉄鋼大手も同じ問題を抱えており、厳しい判断を迫られる可能性がある。

 日本の鉄鋼業は80年代の円高不況、90年代のバブル崩壊、08年のリーマン・ショックと何度も危機に見舞われてきた。そのたびに合理化を重ね、再編を繰り返し、生き残りを図ってきた。

 働く人を切り捨て、地方に犠牲を強いるようなことはあってはならない。国、自治体と連携し、地元も納得できる支援策を探るのが企業の責務ではないか。

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