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<性から生へ ジェンダーを越える 第1部 いまを知る>5 炎上生む固定観念

 「働く女は、結局中身、オスである」「(25歳を超えた女性は)チヤホヤされない」…。これらの言葉をあなたはどう感じますか。

 「ジェンダー炎上」。企業や自治体の広告発信者が今、恐れている現象だ。家事や育児のシーンに女性だけを使うといった性的役割の決めつけや差別、露骨な性的表現などに激しい批判が巻き起こることで、冒頭の二つの広告も「女性蔑視だ」などと炎上した。

ライフスタイルがSNS代行サービスで手掛けた投稿。客観的な目線で表現を精査できると好評だ(阿部裕貴撮影、写真を一部加工しています)
ライフスタイルがSNS代行サービスで手掛けた投稿。客観的な目線で表現を精査できると好評だ(阿部裕貴撮影、写真を一部加工しています)


 「この写真だと肌の露出が多すぎる」「『女子力』は他の表現に換えられないかな」。昨年12月、札幌市豊平区のウェブ制作会社「ライフスタイル」の事務所で久保哉子社長(39)と数人の社員が議論していた。

 同社は、契約企業のインスタグラムやフェイスブックなどの会員制交流サイト(SNS)のデザインや掲載文章を考え、指定の日時に投稿している。客観的な目で「問題になりそうな表現」を排除できると好評だ。

 2012年に始めて以来、顧客は道内外の建設会社や美容室、リフォーム会社など約20社に上る。久保社長は「スタッフは全員女性。そもそも性差別的表現を発想することがなく、企業のリスクマネジメントに一役買っている」と話す。

 ネット時代の今、広告批判は瞬時に広がる。17年には「絶頂うまい出張」と題するビール会社のネットCMが1日で公開中止となった。札幌などの出張先で食事を共にしたグラマラスな女性が「肉汁いっぱい出ました」などと性的行為をイメージさせるせりふを連発する内容に対し、会社は「男性に都合の良い女性像」「女性を商品化している」と激しく非難された。

 道内では昨年、函館市が婚活支援のための「女子力UP講座」と題したイベントポスターを市庁舎などに掲示。「女子力とは何を指すのか」「男性の気を引くため、女らしくしろということか」と批判を浴び、刷り直した。市は「こんなに不快な思いをする人がいるとは考えていなかった」。

 女性や子どもの差別解消を目指す公益財団法人「プラン・インターナショナル・ジャパン」(東京)の昨年調査によると、15~24歳の男女のうち、42%が「広告に不快感・違和感をもったことがある」と回答。理由は「ジェンダーの固定観念の助長」が最多だった。

 「社会の意識は変わっているのに、広告はおっさん目線のまま」。札幌市の広告制作会社に勤める40代男性はこう指摘する。道内の広告業界には「一部が騒いでいるだけ」「過剰反応を気にしていたら何も表現できない」と反発も根強い。

 広告炎上に詳しいジャーナリストの治部れんげさん(45)=東京在住=は「広告主や制作者の固定観念は簡単に変わらない。それでも企業が受けるリスクを予測し、発信する価値があるかを検討するのがプロの仕事だ」と厳しく指摘する。

 女性に暴力を振るう人に私たちのビールは売らない

 17年、広告作品の国際コンテスト「カンヌライオンズ」で、メキシコのビール会社CMが注目を集めた。泥酔した男性が女性に暴行する事件が相次いだことを受けたメッセージだった。

 「広告にとって、価値観の変化は表現の制約ではなく、表現の可能性が広がることだ」と札幌コピーライターズクラブの池端宏介運営委員長(41)は言う。

 池端さんは本年度から共学になった道内女子高のPR広告をつくった。「茶道部だって当然、共学だ」「時代がやわらかくなってきた」とのコピーに、固定観念にとらわれない柔軟な社会への期待を込めた。

 「気にしすぎ」も「一部が騒いでいるだけ」も、もはや通用しない。


 「ジェンダー炎上」は以前からもあった。1970年代の食品会社のCM「わたし作る人、ぼく食べる人」。食事を作るのは女性で、男性は出された食事を食べるという性的役割分担の固定化だとして抗議の声が上がった。

写真2
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 炎上は近年、企業広告にとどまらない。2017年には女性タレントの唇を度々大きく写すなど性的表現を想像させる宮城県の観光PR動画の配信が約1カ月半で打ち切りに。昨年11~12月には熊本県での女子ハンドボール世界選手権大会の垂れ幕=写真2の(1)=の「手クニシャン、そろってます」などのキャッチコピーに全国から苦情が相次いだ。

 道内では、毎年1月中旬に胆振管内厚真町で開かれる「あつま国際雪上3本引き大会」の開催概要で「女性のような男性」とLGBT当事者をちゃかすとも受け取れる表記=同(2)=があり、批判を受けて削除した例もある。

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