PR
PR

<みなぶん>チケット譲渡、親子もダメ 札幌のフィギュアNHK杯

 札幌市で11月下旬に開かれたフィギュアスケートのNHK杯。羽生結弦選手が華麗な演技で優勝するなど熱気に包まれたが、競技場の外では、チケットを手に途方に暮れる道南の大学生の女性がいた。40代の父親から「親名義で購入したため、娘は本人確認で入場を認めてもらえなかった。厳しすぎないか」と訴える封書が特報班に届いた。背景には6月に施行された入場券不正転売禁止法がある。NHK杯では特に運営側が厳しく本人確認を行い、短文投稿サイトのツイッターでも話題に。賛否は分かれている。

■文化庁「入場可否は興行主の判断」/専門家「不正転売ではなく配慮を」

 女性のチケットは、NHK杯最終日の11月24日に行ったエキシビション。羽生選手の大ファンで、前日から札幌入りし、真駒内セキスイハイムアイスアリーナに開始2時間前に到着した。

■保険証提示しても

 会場でスタッフがチケットの購入者名と運営側の名簿を照合。父親名義のチケットの女性は「本人ではないのでダメです」と伝えられた。学生証に加え、自身と父親の氏名が記載された健康保険証を提示しても結果は変わらず、道南の自宅に帰るしかなかった。

 主催した日本スケート連盟は、NHK杯では「主催者の同意のない譲渡は有償・無償にかかわらず禁止」と定めていた。父親は娘のために、チケット販売会社のウェブサイトで購入後に、無償譲渡も許されない規約を知った。それでも「親子なら大丈夫では」と望みを掛け、娘を送り出した。

 連盟は今季から特定の大会で本人確認を入場の条件とした。入場券不正転売禁止法を受けた対応だ。フィギュア人気が沸騰する中、チケットを買い占めた個人や業者がネット上で高額転売する例が後を絶たない。

 同法は、スポーツや音楽の興行で不正転売の広がる中、来年の東京五輪を見据えて施行された。対象は「特定興行入場券」だ。《1》チケット販売時に、興行主の同意なく有償譲渡を禁じることを明示《2》入場者の氏名や座席を指定―などの条件を満たした入場券を指す。

 今回のNHK杯も特定興行入場券だが、同法は定価を下回る有償譲渡や無償譲渡は規制しておらず、道南の親子のケースは違法ではない。文化庁は「無償譲渡などを条件に入場資格の可否を決めるのは、興行主の判断」とするが、そもそも同法は特定興行入場券に関して、入場時の本人確認は努力義務にとどめている。

 連盟は「ファンから転売対策を望む声が寄せられたため、ルールを厳格にした」と説明するが、跡見学園女子大(東京)の曽田修司教授=アーツ・マネジメント=は「不正転売でない以上、主催者は配慮が必要だったのでは」と指摘する。

■ツイッターで賛否

 ツイッターでは、NHK杯の本人確認の厳しさについて「転売目的でのチケット購入が減るなら大歓迎」「無駄に空席をつくらず、本当に行きたい人が行けますように」と支持する声が目立った。一方で「もう少し何とかならないのか」と柔軟な対応を求める声も。

 本人確認は主催者によって対応が分かれる。音楽イベントを企画運営するウエス(札幌)は、同法施行前から人気のライブは「平等性を徹底」し、本人確認を行っている。一方、プロ野球北海道日本ハムファイターズは、年間約70ある主催試合のうち満席は約10試合。観戦できる機会がある程度確保されているため、特定興行入場券の対象とせず、本人確認もしていない。

 チケット購入者が観戦できなくなった場合の救済策として、定価でチケットを転売できるリセール(再販売)のサイトも広がっているが、多くは出品者が特定の人に販売できる仕組みではない。チケット転売問題に詳しい福井健策弁護士(東京)は「リセールサービスで購入者を指名できるようにするなど、柔軟な対応も必要」と提案する。(五十嵐俊介)

<ことば>入場券不正転売禁止法 2018年12月に議員立法で成立し、今年6月に施行した。公演会場周辺などでチケットを転売する「ダフ屋」は、自治体の迷惑防止条例などで取り締まってきたが、ネット上での高額転売にも対応するため法整備した。違反者には1年以下の懲役か100万円以下の罰金、または両方を科す。今年10月には人気アイドルグループ「嵐」のコンサートの電子チケットを転売したとして、大阪府警が同法違反などの疑いで札幌の女を書類送検した。

<路線バスの廃止や減便 体験談やご意見を> 読者と双方向型の調査報道「みなぶん特報班(みんなで探る ぶんぶん特報班)」は、道内で路線バスの廃止や減便が相次いでいる実態について取材しています。交通網が細ると、地域に大きな影響を及ぼします。路線バスの廃止や減便などに伴い、困ったり、負担が生じたりした体験談やご意見を、お寄せください。


 北海道新聞は、読者のリクエストに記者が取材して応える「みんなで探るぶんぶん特報班」(みなぶん)をスタートさせました。
 この手法は「オンデマンド調査報道」(JOD=Journalism On Demand)と呼ばれ、読者と記者が会員制交流サイト(SNS)やメールなどを通じて情報交換しながら取材を進めていく双方向型の新たな調査報道として注目されています。
 読者の皆さんが日々の暮らしの中でキャッチした疑問や声を取材の出発点に、記者と共同作業で謎を解き明かしていきます。
 情報提供や取材依頼のほか、取材をサポートする「みなぶん通信員」への登録をお待ちしています。詳しくは「どうしん電子版」特設サイトをご覧ください。

北海道新聞 購読の申し込みはこちらから
新聞配達スタッフ募集
PR
ページの先頭へ戻る