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<みなぶん>ヒグマ対策 駆除と保護のはざまで(4) 追い払い犬、共存に効果

 7月中旬、オホーツク管内遠軽町丸瀬布の林道で、大型犬2匹を連れた男性の約50メートル先に300キロはある大型のヒグマが現れた。犬1匹が牙をむいて「ウー」とうなり、クマを脅すかのように飛びかかって尻にかみつくと、クマは一瞬ひるんだかに見えた。さらにもう1匹がうなり続けると、にらみ合うこと数分、クマは身の安全を優先するかのように立ち去っていった。

■恐怖心植えつけ

 クマに出くわしたのはクマとの共生を目指す「羆(ひぐま)塾」を同町で主宰する岩井基樹さん(56)とヒグマ対策犬「ベアドッグ」として飼われるジャーマンシェパードの2歳の雌「愛」、愛とオオカミ犬から生まれた11カ月の雄「飛龍(ひりゅう)」。岩井さんは実際にあった光景を振り返り、「子グマだとおびえて木に登り、ふんを漏らすこともある。この犬たちがいないとクマ対策はままならない」と力を込めた。

 ベアドッグの任務は、クマが人里に出没する間際の山中でうなり声を上げ、恐怖心を与えて「人に近寄るな」と教え込むこと。人懐っこい姿はクマに出合うと一変し、クマがやぶに隠れても臭いで見つけだす。岩井さんは山林に設置した40台の無人カメラでクマの動きを把握し、犬を送り出しては脅す作業を繰り返す。

 東京育ちで北大を卒業した岩井さんは、大自然に憧れて米アラスカで約20年間過ごした。2000年に丸瀬布に移住し、クマが箱わなで大量に駆除される場面に直面。アラスカでも駆除はあったが、もっとクマと共存していたはずだと疑問を持ち、05年に羆塾を設立し、独自にクマを人里から遠ざける追い払いを模索し始めた。

 活動は試行錯誤。「ゴム弾は茂みに隠れられたら使えず、クマも学習してしまった」。たどり着いたのがかつて暮らしたアラスカで実績を上げつつあったベアドッグだった。

 09年に育成し始めた当初は半信半疑だったが、何度もしつこくうなり続ける犬がクマに与える「教育効果」は小さくないと確信。今は子供たち対象の野外活動や山岳レースのトレイルランを行う地元団体に協力し、追い払いを行っている。

■資金確保が課題

 長野県軽井沢町のNPO法人ピッキオは04年、ツキノワグマ対策のベアドッグを米国から導入。町の委託で2匹が年間延べ約160回出動し、住宅地に近づくクマを追い払っている。ピッキオの田中純平さん(45)は「住宅地へのクマ侵入は当初の年約40件から1桁に減った」と強調。今年は札幌開建の要請で札幌市南区の国営滝野すずらん丘陵公園に侵入したヒグマの動向確認にも活用された。

 ただ、犬の育成費は追い払いの派遣収入だけでは賄えず、「資金確保が課題」(田中さん)。犬を管理する担い手を育成する必要もあり、札幌市環境局のクマ担当部署も「ベアドッグ導入の予定はない」。犬の効果を認めるクマ専門家も少なくないが、NPOなど担い手が現れるかは微妙だ。

 札幌市は住宅街へのクマ出没が予想される地域には電気柵の導入を呼び掛けているが、費用負担のほか、誤作動を防ぐ下草刈りなど日常管理も伴うため、なかなか進まない。人とクマの共存をいかに実現するか―。生息数の増加で今後も住宅街への出没が増えかねない中、新たな知恵や対策も問われている。=おわり=


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