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<みなぶん>ヒグマ対策 駆除と保護のはざまで(3)発砲許可出ず現場困惑

 8月13日、札幌市南区藤野の住宅街。市の要請でヒグマに猟銃を向けていた道猟友会札幌支部のハンターは立ち会っていた警察官に「よろしいですか」と何度も発砲許可を求めた。だが警察官は「判断できません」と慎重な言葉を繰り返すばかり。ヒグマは結局、翌14日早朝、住宅街近くの山林にいる時に射殺された。

 札幌支部でヒグマ駆除に出るのは熟練の20人。ハンターは「安全に撃てる機会は何度もあった。上から撃ち、貫通しても弾が畑に入るような場所でしか指示は求めていない。市民が襲われてからでは遅い」と警察官の対応に疑問を呈した。

■「切迫ではない」

 鳥獣保護法などは安全面から住宅街での発砲を厳しく制限する。ただ、住宅街で人がクマに襲われる被害が全国で相次ぎ、警察庁は2012年、人の生命を守るためなら警察官職務執行法(警職法)に基づき、警察官がハンターに住宅街でのクマ駆除を命じることができるとの通達を出した。

 道警生活安全部保安課は「命じるのは危険が極めて切迫し、他に方法がない場合」とし、南区では「そういう状況にならなかったか、別の方法があった」と説明する。南区のようにクマが住宅街を歩いている状況では「切迫」しておらず、人に向かってくるなどしない限り命令は困難と判断しているとみられる。

 だが、ハンター側には住宅街にクマがいること自体、「切迫」しているとの認識が根強い。10月23日の道ヒグマ保護管理検討会でも、知床でクマを含む自然環境の保護管理に当たる知床財団(オホーツク管内斜里町)の山中正実事務局長が「警察庁通達があるのに使えないのは極めておかしい。道と道警がきちんと協議し、使える手段にしてほしい」と訴えた。12年の通達後、住宅街でツキノワグマ5頭を射殺した京都府は「府警と詳しく手順を確認しあっている」という。

■自粛の猟友会も

 警察官とハンターの葛藤はこれだけではない。

 10月18日、空知管内上砂川町の茂みでうなり声が響いた。「クマだ。近いぞ」。現場を訪れた町職員らに緊張が走った。ただ、町の要請で駆け付けた道猟友会砂川支部の池上治男支部長(70)は手ぶら。4月に猟銃の所持許可を取り消されたためだ。「丸腰じゃ危ない」。みな現場を離れた。

 池上さんは昨年8月、砂川市に要請され、警察官立ち会いのもと農村部でクマを射殺した。だが砂川署は今年2月、「人家の方向に発砲した」として鳥獣保護法違反などで池上さんを書類送検。起訴猶予になったが、道公安委員会に銃の所持許可を取り消された。

 池上さんは「クマの背後に高さ9メートルの斜面があり、安全な駆除だった。違法なら警察官が発砲を制止すればよかった」と取り消しは不当だと訴える。道も「違反は確認できない」と池上さんの狩猟免許を更新し、公安委と対応は分かれた。

 池上さんが刑事事件に問われたことは関係者に波紋を広げ、道猟友会新函館支部は今春、「自分たちも所持許可を取り消されかねない」とクマ駆除を当面自粛するよう会員に通知した。

 「伝家の宝刀」なのになかなか抜けない―。警察官やハンターはいかに対応すべきか、関係機関がその場しのぎの対応を続ければ、猟銃使用を巡る現場の困惑は解消しそうにない。

<ことば>警職法 4条で、人に危険を及ぼす恐れのある「狂犬や奔馬等」の出現で「特に急を要する場合」、警察官は危険防止の措置を「命じることができる」と定める。警察庁は2012年4月に出した通達で、「積極的に推進できるとまでは言えない」と前置きしつつ、住宅街にクマが現れた場合もこの4条を根拠に警察官がハンターに猟銃による駆除を命じることは「行い得る」との解釈を示した。

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