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暮らしと法律

写真・動画をネットに投稿する時に気をつけることは

 ブログやYouTubeなどの動画投稿サイト、Facebook、InstagramといったSNSに、お気に入りの音楽や写真を投稿(アップロード)して楽しむ人が増えています。ただ、アップロードには注意が必要です。知らずに他人の権利を侵害するようなコンテンツを上げてしまうと、刑事罰の対象となったり、権利者から損害賠償請求を受けたりすることもあります。そのリスクを避けるための注意点について、札幌弁護士会の古瀬康紘弁護士に聞きました。(くらし報道部 根岸寛子)


スマホで投稿(イメージです)より

■録画したテレビ番組は?
■自分で「歌ってみた」動画の投稿は?
■カラオケ店で歌っている動画は?
■大勢の人が集まる場で撮影した場合は?
■レストランで芸能人を見かけたら?

――サイトやSNSにアップロードする上で注意すべき点はなんでしょうか。

 他人の権利という側面から言うと、代表的なものとして、「著作権」の問題があります。

 私たちは、毎日の生活の中で、音楽を聴いたり、漫画本を読んだり、テレビでドラマやアニメを楽しんだりしています。

 著作権は、その音楽や漫画、映像などの作品・表現を創作した人が取得する権利で、著作権法に定められた権利です。写真や映像、音楽、文章などは、創作した人の「著作物」となり、著作物を創作した「著作権者」以外の第三者が勝手に利用すると、「著作権を侵害した」ということになります。

 なので、基本的に、他人に著作権のある著作物については、著作権者または許諾を受けた人以外は、それをインターネット上で勝手に公開したり、個人や家庭で使用するのに必要な程度を超えて複製したりすることはできません。

■録画したテレビ番組は?

――「個人や家庭で使用するのに必要な程度」とはどういうことですか。

 個人的または家庭内など限られた範囲内での「私的使用」を目的とする場合、例外を除けば複製はできると規定されています(著作権法第30条第1項)。例えば、テレビ番組を家庭でビデオ録画して、個人や家族が楽しむことは私的使用で問題はありませんが、これをディスクに落として、他人に配ったら私的使用の範囲を超えるということになります。インターネットも同様で、録画したテレビ番組をアップロードすることは、著作権侵害として違法になります。

――なぜ著作権が大事なのでしょうか。

 著作物は著作者たちが労力をかけて創作したものです。その著作物が利用される時に正当な対価を得られることによって、創作に携わる人たちの今後の創作活動を支え、日本の文化全体の発展につながります。著作物の正しい利用を促し、著作権を保護することは重要な意味があるのです。

■自分で「歌ってみた」動画の投稿は?

――動画投稿サイトやブログなどには、知らずに違法な音楽動画を投稿してる例も多いようです。

 著作権フリーな音源や自分で作曲・制作した音源以外は、他人に権利があると思った方がいいので、基本的には、他人の楽曲のアップロードは難しいと考えた方が安全です。

 著作権には「送信可能化権」という権利があります。送信可能化とは、著作物をインターネット上にアップロードして、第三者がダウンロードできる状態に置くことをいいます。なので、本来は、著作権者以外の人が、他人の楽曲をアップロードして、不特定多数の人が聞くことができる状態にするためには、著作権者や、楽曲の著作権を管理しているJASRAC(一般社団法人日本音楽著作権協会)などの著作権等管理事業者の許諾が必要になります。

 ただ、JASRACなどの著作権等管理事業者は、YouTubeなどの動画投稿サイト事業者との間で、包括許諾契約を結んでいるため、個人が、営利目的でなく、自ら演奏した自作の音源で、「歌ってみた」「弾いてみた」などの音楽動画を、許諾契約が結ばれている動画投稿サイトにアップロードすることは問題ありません。著作権等管理事業者がどの動画投稿サイト事業者と契約しているかは、各管理事業者のサイトから調べることができます。

――では、音楽CDなどの楽曲を動画投稿サイトに、アップロードすることはできるのでしょうか。

 音楽CDなどの楽曲に関しては、ソニーミュージックやエイベックスなどのレコード会社が「著作隣接権」という権利を持っており、著作権と似たような保護を受けています。そのため、CDや有料配信サイトなどから購入した楽曲をアップロードする際には、レコード会社などの許諾も必要になります。

■カラオケ店で歌っている動画は?

――カラオケで自ら歌っている動画を投稿するのはどうなのでしょうか。

 カラオケの音源は、これを制作した通信カラオケメーカーが著作隣接権を持っています。そのため、通信カラオケメーカーの許諾なく、カラオケで歌っている動画をアップロードすることは、著作隣接権の侵害となり、違法となります。

 カラオケ歌唱動画をアップロードしたければ、通信カラオケメーカーが用意しているプラットフォームを利用すれば、適法にアップロードすることが可能です。


ハロウィンの提灯(イメージです)

■ハロウィーンなど、大勢の人が集まる場で撮影した場合は?

――ハロウィーンの時期には街中で仮装している人をよく見ます。写真に撮ってSNSなどにアップロードしようと思うのですが。

 著作権は写真を撮った人に発生するので、自分が撮った写真をアップロードすることについては、著作権法上、問題はありません。

 ただ、著作権とは別の問題があります。最高裁判例は、みだりに容貌などを撮影されないことや公表されないという意味で、いわゆる「肖像権」を認めています。他人を撮影することが直ちに肖像権侵害になるわけではありませんが、一般人の感覚を基準に、通常は許容されないような状況や態様で撮影した場合には、肖像権侵害が認められる場合がありますから注意が必要です。

 ハロウィーンパーティーのようなイベントやお祭りなど公の場所では、普通は、他人から撮影されることが予想できる状況といえますから、通常の範囲で撮影することは肖像権侵害にあたらないでしょう。しかし、無許諾で特定の人をアップで撮影したり、容姿を揶揄(やゆ)する目的で撮影したりするなど、一般人が許容しないような撮影は、肖像権侵害となる可能性がありますから、控えるべきです。

 のちのちのトラブルを避けるためには、事前に撮影許可を得ることや、SNSに上げるつもりであることを相手に伝えておくことが大切です。

■レストランで芸能人を見かけたら?

――街中でスポーツ選手や芸能人など著名人を見かけた時など、思わず写真を撮り、SNSに投稿したくなります。

 彼らが撮影・投稿に同意していれば問題はありません。ただ、誰もが見える街中とはいえ、著名人にとってプライベートな時間である場合もあります。それを隠し撮りのような形で撮影されることは許容していないでしょうから、撮影行為が肖像権侵害となる可能性は否定できません。また、それをSNSで拡散することは、より肖像権侵害となる恐れが強いでしょう。

 街中ではなく、レストランなど、さらにプライベートな空間だった場合の撮影は、より肖像権侵害の恐れが強まると思った方がいいです。撮影した写真や食事の相手などの情報を公表すると、プライバシー権の侵害となりかねません。

 著名人の場合は「パブリシティ権」の問題もあります。著名人の肖像は、商品の販売などを促進する顧客吸引力を有する場合があります。パブリシティ権とは、このような経済的な価値を独占できる権利のことです。なので、撮影した写真を商用利用するとパブリシティ権の侵害もあり得ます。

――著作権や肖像権などを侵害してしまった場合、損害賠償や刑事罰の対象になるのでしょうか。

 故意または過失により著作権や肖像権などを侵害してしまった場合、民事上の損害賠償責任が発生します。

 また、著作権法には、著作権や著作隣接権を故意に侵害する行為に対しては、著作権等侵害罪として、10年以下の懲役または1000万円以下の罰金、あるいはこれらの併科(懲役・罰金の両方)という罰則が設けられています。比較的軽い気持ちで行われることが多い犯罪ではありますが、窃盗罪よりも重い罪として位置付けられています。

 他方で、肖像権やパブリシティ権、プライバシー権は、判例上認められた権利で、法律の定めに基づく権利ではありませんから、これらの侵害に関する刑事罰は法律上設けられておらず、その侵害行為は刑罰の対象とはなりません。

古瀬康紘(こせ・やすひろ)弁護士>福岡県出身。東大工学部卒業、神戸大ロースクール修了、札幌での司法修習を経て、2009年に弁護士登録。東京の大手法律事務所で勤務したが、札幌での暮らしが忘れられず、家族で札幌に移住、18年に独立開業した。小学4年から1歳までの5人の息子たちの父親で、自称「札幌弁護士会で最も子どもが多い弁護士」。昨春生まれた末っ子が1歳になるまでの間、事務所が託児所代わりになっていたことも。週末はもっぱら息子たちの少年野球のコーチとして汗を流す

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