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道南 虐待防止へ連携進む 函館児相の処理3割増 警察の対応強化で

 全国で痛ましい児童虐待死事件の報道が相次いでいる。その中、道南では児童相談所や警察、医療機関、教育関係者などが虐待被害防止に向け、組織の垣根を越えて連携しつつある。道南の取り組みと課題について探った。11月は厚生労働省が定める「児童虐待防止推進月間」。

 函館など道南の2市16町を管轄する函館児童相談所(函館児相)の2018年度の児童虐待処理件数は626件で、前年度に比べて約3割増。子供への暴言や家族間の暴力を子供の前で振るう「面前DV」を含む心理的虐待が415件で、全体の約7割を占め、食事を満足に与えないなどの育児放棄(ネグレクト)が111件、殴る蹴るなどの身体的虐待が97件。性的虐待は3件だった。

 警察は近年、大人同士のトラブルで駆け付けた現場に子供が居合わせた場合に、面前DVを疑って児相へ通告するよう対応を強化しており、これが児童虐待の発覚・処理の増加につながっている。18年度の虐待処理の半数近くは警察からの通告がきっかけだった。

 一方、函館児相は人手不足気味だ。現在の児童福祉司は12人で、16年度の8人よりは増員されたが、箭原(やはら)信継地域支援課長は「虐待件数に追いつかず、パンク状態。緊急性の低い家庭や学校への聞き取りが後回しになりがち」と話す。

 そこで、子供への支援の一部を児相から自治体にシフトする動きが出始めた。函館市は、緊急性が低い虐待事案の対応について、市次世代育成課の職員7人が「子どもなんでも相談110番」で引き受けている。同課の外山覚課長は「対応件数は増えており、人員を増やすなどの体制強化が必要」としている。(西本紗保美)

 尋常ではない怒鳴り声や泣き声が聞こえたり、暴力が疑われる家庭を見つけた場合は、児童相談所全国共通ダイヤル(電)189へ。

■性被害聞き取るリフカー 「誰から」「何を」質問は最低限

 性虐待を受けたことが疑われる子供から、被害状況の聞き取り方を学ぶ研修会が函館市内で開かれていると聞き、参加した。「RIFCR(リフカー)」と呼ばれる手法で、函館市内では2014年から毎年研修が開催され、参加者数は累計400人に上る。実施団体のNPO法人チャイルドファーストジャパン(神奈川県)によると函館の実施回数は地方都市では全国最多で、性虐待以外の虐待にも応用できるという。

 今年は10月5、6の両日に函館中央病院(函館市本町)で開かれ、各日とも約40人が参加。参加料は講師の交通、宿泊費なども含めて1人1万円とやや割高だが、学校の養護教諭、保育士、看護師、学生など幅広い人材が集まり、計約7時間の講習を受けた。

 同法人の山田不二子理事長らから性虐待の知識や聞き取り方法を学んだ後、参加者同士で子供役と大人役に分かれ、ロールプレイング形式で訓練した。「最近落ち着きがないけど、どうしたの」「オシッコするところを触っているね」「誰かに触られたの」などと質問を重ねる。「誰から」「何を」されたか、最低限の確認で終わらせることが重要という。質問し過ぎると、大人の思うような答えに誘導する「記憶の汚染」が起きる恐れがあるためだ。

 「いつ」と問う質問は、子供があいまいに答えた場合に被害の立証が難しくなるので禁止だ。質問者が動揺したり涙を流したりすると「この話をしてはいけない」と思い込む子供もいるため、自分の感情をコントロールするよう心がけた。訓練を終えても、自分がいざという時にきちんと通告できるか、不安が残った。率直に「どうすればいいですか」と山田理事長に質問すると、「ためらうことは子供を見捨てることになる」と一喝され、考えの甘さを反省した。

 同病院はリフカー研修のみならず、4年前に医師らを中心として関係機関の勉強会「チャイルドファーストはこだて」を発足。虐待防止に関する情報共有を2カ月に1回行っている。

 児相への虐待通告件数が増えても、大人が適切に対応しないと子供を守れないという事実は、千葉県野田市の栗原心愛(みあ)さん=当時(10)=や、東京都目黒区の船戸結愛(ゆあ)ちゃん=当時(5)=が死亡したケースを見ても明らかだ。「痛ましい」「かわいそう」という一時の感情だけで終わらせない、冷静な備えの重要さを伝えていきたい。
<ことば>RIFCR(リフカー) 性虐待被害の発見者が子供から必要最小限の情報を聞き出す面接手法。米国で開発された。捜査機関による「司法面接」につなぐことを目的とする。聞き取りの手順を示す「Rapport(信頼関係)、Issue Identification(問題点の確認)、Facts(事実)、Closure(終結)、Reporting(報告)」の頭文字が由来。

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