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<訪問>「熱源」を書いた 川越宗一(かわごえ・そういち)さん

主人公は実在の人物 樺太や道内舞台

 昨年、松本清張賞を受賞したデビュー作「天地に燦(さん)たり」は、豊臣秀吉の朝鮮出兵時に薩摩の侍と琉球王国の密偵、朝鮮の被差別民が悩みながら己の道を見つける壮大な群像劇だった。「前作同様、作家になる前から頭にあった話」という本作は、サハリン(樺太)や北海道を主な舞台にしている。故郷を追われた樺太アイヌやロシアにあらがうポーランド人が、懸命に生きる姿を史実を土台にして描いた。

 主人公は道内ゆかりの実在した人物2人。幼少時に樺太から対雁(ついしかり)(現江別市)に強制移住させられたヤヨマネクフ(山辺安之助)は「立派な日本人」になるための教育を受け、憧れの女性と家庭を持つが、疫病で妻を含む多数の同朋(どうほう)を亡くし樺太へ戻る。一方、ロシア皇帝暗殺計画に関わったとして樺太に島流しされたポーランド人ピウスツキは、苦役にあえぎながらギリヤーク(ニブフ)や樺太アイヌなど少数民族に興味を持ち、民族学の道に足を踏み入れる。2人は樺太で出会うが、日露戦争など時代の波にのみ込まれていく。

 きっかけはまだ小説を書くつもりがなかった5年前、胆振管内白老町のアイヌ民族博物館(現在は閉館)を訪れたこと。敷地内にアイヌ民族の女性と結婚した民族学者ピウスツキの碑があるのを見て興味を持ち、彼が録音したろう管に南極探検隊に参加した山辺の声が吹き込まれていることも知った。「自分たちとじかに歴史がつながっている気がして、鳥肌が立った」

 執筆で肝に銘じたのは、異なる文化を持つ樺太アイヌやギリヤークをむやみに神聖視しないこと。「自分たちと同じ一人の人間として悩み、立ち向かう姿を書きたかった」と話す。

 1978年大阪生まれ。現在は会社員として京都で働きながら執筆するが、若いころは大学を中退し、バンド活動に力を入れていた時期も。前作も本作も、境界線上に立つ弱者が必死に生きる姿を描くのは「自分自身がそうなっていてもおかしくなかったから。今後もそういう話を書いていきたい」。

東京報道 大原智也

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