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<焦点IR>対論編 岩倉博文苫小牧市長 VS 猪野亨弁護士

 カジノを中心とする統合型リゾート施設(IR)の道内誘致について、地域への大型投資になるとして期待する声がある一方、ギャンブル依存症や自然環境への影響に対する懸念も出ている。IR誘致のメリットやデメリットについて、関係者や有識者に聞いた。(随時掲載します)

■自然と調和させ若者雇用 苫小牧市 岩倉博文市長

 人口減少時代に入り、経済規模の収縮が進む中で、これまでのように既存産業の需要拡大を見込んだ設備投資が期待しにくくなっています。地域の良質な雇用をどう確保するかが地方レベルでも課題になっています。いま観光産業に焦点が当たっていますが、それに頼らざるを得ない日本経済の事情もあります。

 北海道は多くの外国人旅行者が訪れていますが、現在の観光資源だけではいずれ飽きられるでしょう。この勢いを保つ新たな「装置」としてIRは有効な事業だと考えます。

 苫小牧では10年ほど前からMICE(マイス、大規模な会議や展示会)、IRに着目してきました。若者が地元で人生にチャレンジできるような雇用機会をつくりたい。次世代のためにいま、誘致を決断すべきではないかと考えています。市は昨年策定した「国際リゾート構想」で、新千歳空港に近い植苗地区への立地を想定しています。ラムサール条約登録湿地のウトナイ湖に隣接する自然豊かな地域です。

 苫小牧が目指すIR像は「自然との共生」。市は、自然と調和した生活環境の中で未来へ挑戦し続ける人間主体のまち「人間環境都市」を宣言しており、苫小牧に関心を寄せるIR事業者には、この都市像に見合った計画が第一条件であると必ず話します。苫小牧港や苫東地域の開発の経験も生かし、自然と調和を図ることが必要だと考えます。

 カジノに関しては昨年7月、ギャンブル依存症対策の法律が国会で成立しました。従来の公営ギャンブルやパチンコもカバーされるとても効果的な内容で今後、国による依存症患者の実態調査も行われます。依存症に悩める人を救う法律ができたのは、IRの効果だと思っています。

 一方で、ほとんどの市民がIRの事業内容を知らない段階であり、「IRイコールカジノ」という認識の方もいます。(記事で書かれている)「カジノを中心とするIR」なら、私だって反対です。市民に正確なIRの事業モデルを伝えていく取り組みは、今後も粘り強く続けていきます。(聞き手・鈴木雄二)

■北海道ブランドに悪影響 札幌弁護士会消費者保護委員 猪野亨弁護士

 豊かな自然や文化を守り続けてきたことで、観光立国の地位を獲得したのが北海道です。IRには、ギャンブル依存症の増加などの懸念があり、せっかく築きあげた北海道のイメージやブランド力が損なわれるマイナス効果を懸念しています。札幌弁護士会として6月、道内へのカジノ誘致に反対する声明を発表しました。

 道は苫小牧市内にIRを設置した場合、年延べ860万人が訪れ、その半分を道民と試算しています。IRはもともと外国人観光客を中心的な客層として想定していたはず。近隣への外出、旅行をするはずだった道民の行動が、IR利用に置き換わることとなり、北海道経済全体からみて有効な施策と言えるのか疑問です。

 カジノ運営は外国資本で担うことが想定されます。道は年間1560億円の売上高、2千億円の経済波及効果があると想定していますが、収益が海外流出することも、IRに人が集中することによる周辺地域のマイナス効果も検証されず、試算は問題があると思います。わずかな敷地で多くの収益を上げるということは、それだけカジノがカネを吸い上げるということです。

 カジノが引き起こすギャンブル依存症も大きな問題です。多重債務や家庭崩壊、自殺者増、周辺地域の治安悪化、カジノを資金源とする暴力団の存在やカジノ施設が身近となる近隣の青少年への勤労意欲の減退などの幅広い懸念があります。依存症の人を減らすべきなのに、新たな依存症を生む選択肢を増やしてどうするのでしょうか。対策をギャンブルの利益でまかなうなど本末転倒です。

 誘致に向け道や自治体が支払う数億円のコンサルタント料は、IR設置というギャンブルに支払う最初の「賭け金」と言えます。自治体がばくちを打ってどうするのか。経済の活性化はギャンブルではなく勤労で、地域振興はIRではなく、豊かな自然・文化と人びとの交流で図られるべきです。鈴木直道知事は慎重に判断してほしいと思います。(聞き手・犬飼裕一)

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