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第一章 再生
ご家族のVF(ヴァーチャル・フィギュア)を望まれる方は、ご病気で意思疎通が出来なくなったり、死別されたりというケイスが多いですから。少しずつ、以前同様のコミュニケーションが回復してゆくことが、大きな喜びになります。――それは、本当に。ご病気が治ったり、生き返ったりした感じがするようです。ちょっと違うと感じたところは、こちらから助けてあげて、元に戻してあげようと努力するんです。個人的には、この仕事をしていて、わたしが一番、感動するのもその時です。」
「……。」
「生身の人間も、複雑ですけど、心だって、結局は物理的な仕組みですから。VFは、コミュニケーションの中では、限りなくご本人そのものです。」
「――心はないけれども、ですよね?」
「はい、そう申し上げましたが、感じるんです、やっぱり。心って何なんでしょう?」

 彼女は、これまでになく、本音を語っている風の口調で言った。それは、生身の人間らしく、まったく矛盾していた。

 結局、僕は、その日のうちに母のVF製作を正式に依頼した。

 見積価格として、三百万円という額が提示された。以前の僕には、とても手が出なかったが、母が残してくれた生命保険から、どうにか捻出するつもりだった。
第二章 告白

 母のVF製作を依頼した翌日から、僕は、小樽に出張することになっていた。

 興奮のせいか、一種の疚(やま)しさに似た気持ちのせいか、或(ある)いは、出費の決断を急に不安に感じ出したせいか、ともかく、前夜はなかなか寝つかれず、朝も目覚めが早かった。

 「買い物」という言葉が、頼りない眠りをどうにか繋(つな)ぎ留めていた間も、しつこくまとわりついていたが、起きてもまだ思考の周りをうろついていることに気が滅入(めい)った。「高い買い物なのだろうか?」と、それを招き入れたのは、明らかに僕自身だったが。

 クーラーをつけ、水を一杯飲んで、汗ばんだ体に涼気を受けながら、南向きの窓を見つめた。母が愛し、生涯、ローンを払い続け、結局、幾分、払い残したこのマンションは、その死後、僕の複雑な思念の対象となった。

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