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<みなぶん>「無料」で出した求人広告サイト 説明なく高額請求 申込書に小さく「自動で有料に」、狙われる中小事業者

 「無料と言われ求人広告サイトに掲載を申し込んだら、高額の費用を要求された」―。道北で飲食店を経営する30代男性から5月、1通のメールが寄せられた。同じサイトに道内の求人が数多く載っており、掲載業者が同様の請求を受けていないか心配という。調べると、人手不足を反映しインターネット上に無名の求人広告サイトが乱立。中小事業者を中心に全国でトラブルが多発していた。

 「3週間無料キャンペーン中なのでぜひ」。男性は4月、サイト運営会社の社員を名乗る男から電話を受けた。店の人手不足は深刻。「ダメ元で」と軽い気持ちで申込書を返送した。

 1カ月後に請求書が届いた。「広告掲載料16万2千円」。寝耳に水で、会社に確認したが「解約の連絡がなく有料掲載に移った」と相手にされない。申込書には「キャンペーン終了後、自動で有料掲載に移行する」と小さな注意書きがあったが、口頭での事前説明はなかった。男性は弁護士を通じて支払いを拒否し、請求は途絶えたという。

 勧誘方法に問題はないのか。同様の相談を受けている札幌市の川村忠之弁護士は「広告掲載に関する契約は、その内容について当事者が合意して初めて成立する。客が有料への移行を認識していなければ正当な合意とは認められず、契約は成立しない」と強調する。

 根拠として民法643、656条を挙げる。委任契約は申し込む側の「委託」と受ける側の「承諾」によって効力が生ずると両条は規定。だが男性は無料の前提で広告掲載を「委託」していた。川村弁護士は「有料への移行を顧客に確実に伝えなければ、業者はそのことを意図的に隠しているも同然」と指摘する。

 同様のトラブルは相次ぐ。札幌市中央区の美容室経営の40代男性は4月、約45万円の支払いを求め訴訟を起こされた。「大手サイトなら月2万円ほど。人手不足につけ込む悪徳商法だ」と憤る。今も係争中だ。同市白石区の人材派遣業者も3月、約17万円を請求された。支払いは回避したが、サイト運営会社にどう喝されたという40代女性社員は「自分で払い、楽になろうかと考えた」と振り返る。

 取材した男女3人は東京都や横浜市の別々の会社から請求を受けたが、登記簿によると会社はいずれも昨年9月以降に設立され、契約書類の体裁などで共通点が多い。1社に電話で実態を尋ねたが「答える義務はない」との返答だった。

 川村弁護士は「同一グループが複数の会社を立ち上げ、法的問題への対応に不慣れな中小事業者を狙っている」と推測。有料への移行に関する注意書きについては「訴訟になった場合、客側に不利な証拠として扱われかねず客側は敗訴する恐れもある。周到で悪質なやり方」と警鐘を鳴らす。

 トラブルは全国でも報告され、請求通り支払った業者もいる。全国の弁護士約350人が情報交換を続けており、参加する川村弁護士は「同様のサイトは約30件、トラブルは数千件に上るのでは」とみる。

 今年、数十件の相談を受けた釧路弁護士会は、6月に注意喚起の談話を発表した。同会の丸谷誠弁護士(帯広)は「契約前に書面を十分に確認してほしい」とし、日弁連の中小事業者向け相談窓口「ひまわりほっとダイヤル」((電)0570・001・240)の活用を呼びかけている。(角田悠馬、中秋良太)


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