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事故繰り返す高齢ドライバー増加 免許返納どう説得 悩む家族「支援体制整えて」

 交通事故を繰り返しても運転免許証を保有し続ける高齢者が後を絶たない。道警によると、道内で1年間で3回以上の事故を起こした65歳以上の高齢者は統計を取り始めた2014年5月以降で2208人いるが、自主返納したのは1・7%の37人にとどまる。家族らが危険運転に気付いて返納を促しても本人が拒む事例もあり、説得に悩む家族らから支援を求める声が上がっている。

 「父は『走る凶器』だった。人をひいたらと思うと震えが止まらなかった」。札幌市西区の会社員女性(56)は無職の父親(87)が免許証を返納するまでの過程を涙ながら振り返った。

 昨年夏に両親と同居を始め、父親の車に複数の傷があることに気付いた。電柱や分離帯にぶつかったと言うので、妹とともに免許証返納を促すと「おまえに言われる筋合いはない」と怒鳴られた。

 父親は5年前に脳出血で体調を崩し、友人とゴルフや飲食をする機会が減ったため、「車が唯一の趣味」になっていた。父親に病院への送迎を頼る母親(80)も運転の継続に賛成で、親子間での口論が増えた。

 父親は昨年11月、札幌市中心部の駐車場でバック時に別の車に衝突。1週間後には赤信号で交差点に進入し、横からきた車が急ハンドルを切ったことでかろうじて事故は免れた。父親に反省の様子はなく、2カ月後には免許を更新。その際、脳出血で意識を失ったことがあるのに「病気で意識を失ったことはない」と、うその申告をしていたと後で知った。

 「早くやめさせないと、取り返しがつかなくなる」。女性は、父親に認知症の疑いがあるとみて医師の診断を受けさせようとしたが、拒まれた。ついに今年4月、札幌中央署に相談すると担当者が自宅を訪れ、「うその病状申告は刑事罰に問われる」と説得。父親はようやく返納に応じた。

 返納の2日後、東京・池袋で車が暴走し、母子が死亡する事故が起きた。運転していた旧通産省工業技術院の元院長は父親と同い年だった。「背筋が凍る思いがした」。女性は「親の免許返納を家族だけで解決するのは困難。相談窓口など支援体制を整えてほしい」と強調し、車に頼らなくても生活しやすい社会づくりが必要だと訴える。

 道警によると1年間で3回以上の事故を起こす高齢者は増加傾向にあり、18年は3年前と比べ4割増の497人だった。また、15年と18年には9回の事故を起こした高齢者も1人ずついた。道警はこれら高齢者宅を訪れ、免許返納を促す取り組みを進めているが、目立った効果は出ていない。

 背景には、高齢で足腰が弱るほど通院や買い物で自家用車に頼らざるをえない実態もあり、バスなど地方公共機関が少ない地方ほどそうした傾向は顕著だ。立正大の所正文教授(産業・組織心理学)は地域をこまめに走る乗り合いバスなど「返納による不便さを解消する移動手段の確保」が課題だとした上で、「高齢者には夜間や雨の日の運転を控えるなど運転機会を徐々に減らしてもらうことも重要だ」と話している。(桜井翼、佐藤圭史)

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