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<奇跡を起こせ 夕張高校>上 「東大狙う」本気の公設塾

 夏休みが明け2学期が始まった19日、夕張高校の生徒たちが放課後、校舎近くの建物で勉強にいそしんでいた。夕張市が2018年度に開いた公設塾「夕張学舎(がくしゃ) キセキノ」だ。その名には「奇跡を起こせ」などの願いが込められている。

■学力高くない

 「夕張高の入試の偏差値は40ほど。学力水準が高い学校ではありません」。今勉(こんつとむ)夕張市教育長(62)は、はっきりと言う。そしてこう続ける。「その夕張高から近い将来、東大合格者が出たらどうでしょう。僕らは真剣ですよ」。狙うのは、奇跡的な生徒の学力アップだ。

 キセキノには全校生徒65人のうち17人が通う。月謝は3千円で入退会自由。夏休みもお盆期間以外は開講し、普段は平日午後3時半から9時まで勉強できる。

 「先生、この公式の意味は?」。3年生の女子生徒が尋ねると、数学・理科担当の講師松宮聡さん(46)が近寄って丁寧に指導した。国語・社会は牧野大樹さん(35)が担当。2人は地域おこし協力隊員だ。講師を募集中の英語も、分担して教えている。

 教材づくりも2人で行う。生徒の学力はさまざまで、中学校1年で習う「英語で曜日を言う」ことができない生徒もいる。牧野さんは「それでも投げ出さずにここに通ってくる。僕たちはしっかり受け止め、その子に合う問題を作り、根気強く教えます」と話す。

■存続に不可欠

 開設のきっかけは4年前、15年度に市が市内の中学生に行ったアンケートだった。夕張高に進学を希望するか尋ねたところ、希望する生徒はわずか3割。実際は市内の中学生6割以上が夕張高に進むが、中学生が魅力を感じていない実態が浮き彫りとなった。

 人口の半数超が65歳以上の高齢者。まちの活気を左右する夕張高の存廃は、市民の重大な関心事だ。その中で市役所にワーキンググループができ、「存続には学力アップが欠かせない。公設塾をつくろう」との結論を導き出した。財政破綻している市は予算がかかる独自事業を行えないため、17年度にふるさと納税によるクラウドファンディングで資金を募集。700万円の目標に対し、2300万円が集まった。

 塾舎は、使われていない民間企業の事務所(93平方メートル平屋)を年間70万円で借りられることになり、講師は、国から給与が手当てされる地域おこし協力隊員に任せることにした。

 こうして始まったキセキノと並行して、もう一つの大きな事業も動きだした。大胆にも「学校の授業で英語をペラペラになってもらおう」という取り組みだ。
(夕張支局の志村直が担当し、3回連載します)

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