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<訪問>「お砂糖とスパイスと爆発的な何か」を書いた 北村紗衣(きたむら・さえ)さん

心の抑圧と闘い新たな発見

 男社会の中でバカにされないための女性の服装や髪形。著者がそれに抵抗を感じると、決まったように心の中に「マギー」が現れ、こう語りかけてくる。

 「田舎育ちなんだから、育ちが分からないようしっかりした身支度をしないとダメです」

 マギーとは、元英国首相マーガレット・サッチャーのあだ名だ。小さな町で生まれたマギーは努力の末にオックスフォード大を卒業し、英国史上初の女性首相の座に上り詰めた。

 著者は武蔵大准教授。士別市生まれで、子どもの時から勉強が好きだった。列車で1時間かけて旭川の高校に通学、東大へ進んだ。奨学金で留学し、英国の大学院で博士号を取った。本書は、さまざまな作品に出てくる女性や歴史的背景をフェミニズムの視点から考え、25のエッセーにまとめた。

 著者の心に現れる「マギー」は「私自身の中にある田舎娘の野心とコンプレックスが姿を変えたもの」。炭鉱労働者がマギーを批判する歌を思い浮かべたりして「マギー」を追い払う。

 「マギー」と名付けた心の中の抑圧と闘うのは、英国の女性作家バージニア・ウルフ(1882―1941年)に倣った。ウルフの心に現れた「家庭の天使」は、妻や母の役割を果たすことを褒め、男性を称賛するよう助言した。そこでウルフは天使を「殺して」、その社会的抑圧をはねのけた。

 シェークスピアなど英文学が専門。年間に映画と舞台を各100本、本を260冊読む。フェミニズム批評に取り組むのは作品を楽しむためだ。米映画「ローマの休日」(53年)を「プリンセスに対する男性の憧れ」、米文学「二十日鼠と人間」(37年)を「キモくて金のないおっさん」という視点で捉えると、新たな発見がある。

 私たちのものの見方は、それまで生きてきた世界によって、知らないうちに縛られている。それは女性も男性も同じだ。「私をその『おり』から出してくれたのが文学とフェミニズム。今を生きることを、文学や芸術が助けてくれることもあるのです」

東京報道 大沢祥子

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