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<激震 暗闇の大地(ブラックアウト)>第7部 生命線、どうつなぐか(1) ラジオが突然切れた

 災害時はラジオが最大の情報源―。そんな常識を揺るがす事態が、2018年9月6日、起きていた。

 胆振東部地震による全域停電(ブラックアウト)の発生から19時間ほどが経過した午後10時22分。STVラジオ(札幌)の技術担当部署に、異常を知らせるアラームが鳴った。周辺約14万世帯に電波を届ける室蘭市内の送信所で音声が送れなくなっていた。

 送信所は稼働していたが、音声データが届かない。親局のある札幌から室蘭へ、データを送る回線が不通になっていたのだ。

 予備回線への接続を試みたが、これもつながらない。種類の違う二つの回線でバックアップしていたはずが、両方とも使えず「想定しない事態」(長坂清治技術部長)に直面した。

 夜も遅かったが、地元の保守業者に送信所へ急行してもらった。携帯電話の回線を使い、なんとか音声データを送れるようになったのは午後11時24分。放送停止から約1時間後だった。

 通常の回線は7日午前1時50分ごろ復旧した。だが、「危機を脱した」と安堵(あんど)したのもつかの間。停電発生から丸1日が過ぎようとした午前3時22分、またもアラームが響いた。

■回線の遮断 連鎖 通信拠点、蓄電設備足りず

 2018年9月7日未明、STVラジオ(札幌)の社内に再び緊張が走る。今度のアラームは檜山管内江差町の送信所からだった。前日の胆振東部地震による停電直後に稼働した非常用の発電機が突如、止まった。

 発電機を3~4日動かせる燃料は備蓄していた。だが、24時間運転すると自動的に停止する仕組みになっていた。長坂清治技術部長は「社内にその設定を知る者がおらず、停止の理由がまったくわからなかった」という。深夜だったが、地元業者が発電機を再起動するまで、停波は1時間22分に及んだ。

 STVラジオだけではない。北海道総合通信局によると、地震時には、全道規模で放送するAM、FMの民放ラジオ局4社すべてで、規模の差こそあれ一部停波が発生した。小規模なコミュニティーFM局でも、道内27社中17社が親局や中継局で停波していた。

■想定外の事態

 エフエム・ノースウエーブ(札幌)は7日午前4時32分に函館で突然放送が止まった。予備回線も使えなくなり「緊急時のマニュアルを超えた事態だった」(加藤秀之取締役)。何度も試行し回線を再接続できたのは午前5時54分。通常番組が開始する午前6時に、ぎりぎり間に合った。

 全域停電(ブラックアウト)直後ならともかく、相当な時間が経過していた。なぜ、このタイミングでラジオの命綱である回線は次々と切れたのか。実は、通信線を管理するNTT東日本のサービス自体が停止したのが、大きな要因だった。

 NTT東日本は、地震そのものの影響で使えなくなった回線ケーブルなどの通信施設を、6日午前中には大部分で仮復旧させていた。だが、固定電話や光通信などの回線は全道570カ所にある「通信ビル」経由で維持されている。ビル内の管理機器が稼働し続けないと、回線は保てない。

 通信ビルのうち、発電機を常備するのは100カ所弱ほど。残りは10~36時間維持できる蓄電池しかない。電源が切れそうになれば、7拠点に配備した移動電源車24台が駆けつけ、充電することになっていた。

 だが、「全道が同時に停電することは想定していなかった」(高橋庸人北海道事業部長)。6日夜に一時ほとんどの回線が復旧したが、その後、各通信ビルの電源が失われ始めると、再び通信障害の数は増えていった。

 NTT東日本はフェリー経由で本州から電源車をかき集めたが、7日午後7時には道内の1割近い14万回線が停止した。北海道総合通信局は、北海道電力による復旧情報の提供が遅れたことで、効果的な電源車配置ができず「道内全体の通信・放送サービスの早期復旧に影響を及ぼした」と報告書で指摘している。

 携帯電話各社も同様に通信をつなぐ基地局の予備電源が次々に枯渇し、6日午後9時に全道で約6500局が不通になった。電力供給が戻っても自動復旧しない基地局も多く、本格復旧は8日までかかった。

■救急網も不通

 全道停電が連鎖的に通信、放送の遮断を招き、さらに住民を支えるサービスにも大きな影響を与えた。

 「保健所とも他の病院とも、連絡がぷっつり途絶えてしまった」。登別市の恵愛病院はあらゆる通信手段を失った7日、地域の救急当番だった。地震の混乱で急患受け入れができなくなっていたが、それを伝えるすべがない。病院では担当者を保健所などに走らせ、できる限りの情報共有にあたった。

 再発防止策はあるのか。昨年の事態を受け、NTT東日本は二十数億円をかけて、4年間で道内の通信ビルにある蓄電池の容量を増強するという。

 だが、民放のラジオ波は難しい。北海道総合通信局によると、NHKには独立した無線で送れる専用の固定マイクロ回線が整備されているが、同様の設備更新には多額の費用が必要だ。ある民放FM局の技術責任者は嘆く。「設備投資には資金面で限界がある。悔しいが、正直難しい」(宇野沢晋一郎、生田憲)

 国内初のブラックアウトで生命線を断たれた通信、物流、小売業界などの混乱を検証し、課題解決や対策の取り組みを探る。(5回連載します)

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